"母の命日と550万円の披露宴" 第4話
美子は挨拶もせず、ソファへ腰をろした。
「りいなの。それより、本当にくなるんでしょうね」
桜井さんは営業用の笑顔を崩さず、見積を表示したタブレットを差しした。
正規料は580万円で、そのに優待適用の116万円が示されていた。
は画面をのぞき込み、歓声をげた。
「本当に116万円。すごい」
美子は、私の信用で認められた特例だとは理解せず、ホテルの通常料を非難した。
「元がすぎるのよ。ホテルなんて商売と同じね」
そこから2の求は際限なく膨らんだ。
料理は最級コース、引き物は級ブランドの器、会装は通常の倍へ変更された。
私は見積額が増えていく画面を指した。
「割引が効くのは基本プランだけです。追加分には正規料がかかります」
美子はを振り、私の説を遮った。
「分かっているわ。せっかくの結婚式なのに、けちをつけないで」
もカタログをたたき、私をにらんだ。
「私の結婚式なんだから、私が1番輝けるようにするのが当然でしょう」
勝は私と目をわせず、妹の側についた。
「祝い事なんだから、好きにさせてやれよ」
最終見積額は250万円となり、当初の予算を50万円超えた。
打ちわせの最、桜井さんは契約を私たちのへ置いた。
彼は全員に条項を示しながら、支払い方法を説した。
「本来は式の1週までに全額をお支払いいただきます。
広告
ただし今回は、楓さんの信用により、翌末払いを認めます」
さらに、形式は私が個保証になる必があると告げられた。
私は騒ぎを避けたいで、契約へ署名した。
「私が責任を持ちます」
桜井さんが確認を続けると、美子は腕計を見て苛った。
「まだ終わらないの。客を待たせず、もっとくしなさいよ」
私はわずちがり、美子へ向き直った。
「失礼です。桜井さんに謝ってください」
美子は扇子で私を追い払うような仕をした。
「おをすのは私たちよ。紹介したくらいで偉そうにしないで」
桜井さんは私を落ち着かせ、静かに首を振った。
「楓さん、丈夫です。お気になさらないでください」
彼の目には、私への気遣いと、義族への失望が浮かんでいた。
ホテルをると、美子とは最の式になると浮かれていた。
それから数の朝、病院から母が危篤だという話が入った。
私は返事をすると、着替えをバッグへ詰め始めた。
「分かりました。すぐに向かいます」
隣で眠っていた勝が、迷惑そうに目をけた。
「朝からうるさいな。何があったんだ」
私はを止めず、母の状態を伝えた。
「母が危篤なの。病院へってくる。泊まりになるかもしれないから、のことはお願い」
勝は半を起こし、私を呼び止めた。
「来週の曜はの結婚式だぞ。
広告
それまでには戻れるんだろうな」
私はバッグを閉じ、彼を振り返った。
「今は分からないわ。母の命がかかっているの」
勝は眉にしわを寄せ、自分の体面を持ちした。
「結婚式は涯に1度だ。親戚も集まるし、俺の顔がたないだろ」
私はこれ以話しても無駄だと悟り、バッグを持って寝をた。
病院へ着くと、母はまだ息をしていたが、医師から危険な状態だと告げられた。
私は会社へ事を伝え、休暇を申請した。
司は話の向こうで、穏やかに告げた。
「仕事は気にしなくていい。今はお母様のそばにいてあげなさい」
私は病へ戻り、母のを握った。
その、美子からの着信が表示された。
無すれば病院へ押しかけてくるかもしれないとい、私は通話ボタンを押した。
美子はを刺す声で問い詰めてきた。
「勝ちゃんから聞いたわ。今、病院にいるの」
私は母を見て答えた。
「母の容体がよくないんです」
美子はため息をつき、結婚式の予定を持ちした。
「来週はの結婚式よ。にそうな寄りより、未来のある若者のお祝いを優先するのが常識でしょう」
私はりを抑え、美子を制した。
「言葉を慎んでください。今は母のそばをれられません」
美子は私を雑用係と呼び、すぐ帰れと命じた。
私は反論して通話を切ると、勝から届いたメッセージをいた。
母親をらせたと私を責め、事をする者がいない、涯に1度の結婚式を優先しろとかれていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
追い出された私が離婚届を渡した日、夫の人生は崩れ始めた
新築の我が家に突然押しかけてきた義両親一家。 七人もの親族に家を占領され、家事も生活費もすべて押し付けられる日々。さらに夫・進は「養ってやっている」と私を見下し、ついには「お前は赤の他人だ」と言い放った。 限界を迎えた私は、静かに離婚届を差し出す。 しかし、彼らはまだ知らなかった―― 私が本当に失うものなど何もないことを。 そして、夫が隠していた重大な秘密と、一族を待ち受ける衝撃の結末を……。 これは、踏みにじられた妻が、自分の人生を取り戻すまでの逆転劇。兄弟姉妹|嫁姑1.7萬字5 356 -
完結第13話
消えた託児代7万円
2001年、東京の外れにある義実家で暮らす保育士のゆいは、夫の妹・安奈から何度も娘の子守りを押しつけられていた。 「保育士でしょ?」 「家族なんだから」 「今日だけお願い」 そう言われるたび、ゆいは仕事帰りに1歳のクレアを風呂に入れ、寝かしつけ、夜泣きにも起きてきた。けれど夫も義母も、それを“当然の手伝い”としか見ていなかった。 ある朝5時半、安奈は39度の熱を出したクレアを抱えて現れる。 「娘の子守りよろしく」 仕事を理由に断ろうとするゆいへ、夫は笑って言った。 「保育士なんだから慣れてるだろ。ケチくさいこと言うなよ」 その一言で、ゆいの中で何かが切れた。 なぜ安奈は、そこまで頻繁に娘を預けていたのか。 なぜ“仕事”と言って家を空ける日が増えていたのか。 そして、クレアの父親だけが知らなかった事実とは――。 便利な保育士として扱われ続けた嫁が、初めて「無理です」と告げた日、義家族の隠された嘘が静かに崩れ始める。兄弟姉妹|夫婦1.9萬字5 103 -
完結第11話
断髪新郎の逆転婚礼
抗がん剤治療で髪を失った彩佳は、唯一の家族である兄・健太の結婚式に出席することになった。 両親を亡くしてから、兄妹2人で支え合って生きてきた彩佳。兄の幸せを心から願い、母の形見のスカーフを巻いて式場へ向かう。 しかし、兄嫁の母・礼子は、そんな彩佳を見た瞬間、冷たい言葉を投げつけた。 「その頭で親戚席に座る気なの?」 病気の妹は縁起が悪い。式に出るな。兄との縁も切れ――。 追い詰められた彩佳の前に現れた健太は、笑顔のまま静かに言い放つ。 「では、新郎ごと帰りますか?」 その一言で礼子の顔色は変わった。 だが本当の反撃は、披露宴で用意されていた“新郎新婦、最初の共同作業”から始まる。兄弟姉妹|修羅場1.7萬字5 72 -
完結第12話
家賃55万の置き土産
夫の家族と13年間暮らしてきたまゆ子は、ある日突然、義母から告げられる。 「里帰り出産で長男夫婦が来るから、あなたは明日までに出ていって」 家族のために尽くしてきたはずだった。血のつながらない息子にも、義母にも、夫にも、ずっと気を遣ってきた。けれど義母にとって、まゆ子はもう“用済み”の存在でしかなかった。 しかも夫は出張と偽り、別の女性と会っている疑いまで浮かび上がる。 翌日、まゆ子は言われた通り家を出ることにした。 ただし、何もかも置いていくつもりはなかった。 月55万円の家賃を払っていたのは誰なのか。リビングを埋める家具家電を買ったのは誰なのか。 まゆ子が引っ越し業者に告げた一言で、義母たちの“幸せな同居計画”は静かに崩れ始める――。兄弟姉妹|親子関係1.8萬字5 100 -
完結第11話
嫌われた娘の五十八億円
父から一度も愛されたことがないと思い込み、家族からも見放された白石真琴。 父の告別式の日、兄たちから「遺産は一円も渡さない」と突き放された彼女のもとに、深夜一本の電話が入る。 それは、亡き父が最後まで隠し続けた“真実”を伝える弁護士からの連絡だった。 58億円の遺産、封印された手記、そして父が30年間演じ続けた冷酷な態度の本当の理由。 なぜ父は、最愛の娘を傷つけ続けたのか。 なぜ人生を捨てるほどの覚悟で、娘を遠ざけたのか。 一冊の手記に記された、父の命懸けの愛と、家族に隠された衝撃の真実とは――。兄弟姉妹|相続1.7萬字5 394 -
完結第12話
家賃55万の置き土産
夫の家族と13年間暮らしてきたまゆ子は、ある日突然、義母から告げられる。 「里帰り出産で長男夫婦が来るから、あなたは明日までに出ていって」 家族のために尽くしてきたはずだった。血のつながらない息子にも、義母にも、夫にも、ずっと気を遣ってきた。けれど義母にとって、まゆ子はもう“用済み”の存在でしかなかった。 しかも夫は出張と偽り、別の女性と会っている疑いまで浮かび上がる。 翌日、まゆ子は言われた通り家を出ることにした。 ただし、何もかも置いていくつもりはなかった。 月55万円の家賃を払っていたのは誰なのか。リビングを埋める家具家電を買ったのは誰なのか。 まゆ子が引っ越し業者に告げた一言で、義母たちの“幸せな同居計画”は静かに崩れ始める――。兄弟姉妹|親子関係1.8萬字5 933 -
完結第11話
捨てた料理の代償
義母・美智子と同居しながら、穏やかに暮らしていた奈々子。 ところが、お盆になると義妹の杏奈夫婦が突然帰省してくる。連絡もなく家へ上がり込み、食事を当然のように食べ、手伝いもせず、さらには義母へ金まで借りようとする二人。注意されるたび、杏奈は奈々子を「他人」扱いし、実家を乗っ取った嫁のように責め続けていた。 そして迎えたお盆の夕食。 食卓に並んだ料理を見た杏奈は、皆の前で言い放つ。 「他人が作った食事なんて、汚くて食べられない」 さらに翔太まで調子に乗り、料理を捨てようとする。 しかし、その料理には杏奈夫婦が知らない“ある秘密”があった。 閉じられていた和室の襖が開いた瞬間、杏奈の顔色は一変する。 翌朝、この家を出ていくことになったのは、「他人」と呼ばれた奈々子ではなかった――。兄弟姉妹|嫁姑1.7萬字5 8049 -
完結第14話
新郎が消えた結婚式
親に捨てられた私を育ててくれたのは、血のつながらない兄・航太だった。 両親が借金を残して消えた日、大学生だった兄は「俺が何とかする」と言い、働きながら私を支えてくれた。高校を中退した私を責めることもなく、ずっと本当の家族として守ってくれた。 そんな兄が、ようやく結婚することになった。 私は心から祝福するつもりで式場へ向かった。けれど式の直前、エリートの兄嫁は私に笑顔で言い放つ。 「毒親の連れ子なんでしょ?中卒のクズは参列しないで」 兄の幸せを壊したくなくて、私は黙って帰ろうとした。 しかし、その言葉を兄は聞いていた。 「分かった」 そう言った兄が次に選んだ行動で、華やかな結婚式場から人が次々と消えていく――。 血のつながりではなく、苦しい時に誰が隣にいてくれたのか。本当の家族の意味を描く、涙と因果応報の物語。兄弟姉妹|第二の人生2.1萬字5 1246 -
完結第13話
消えた託児代7万円
2001年、東京の外れにある義実家で暮らす保育士のゆいは、夫の妹・安奈から何度も娘の子守りを押しつけられていた。 「保育士でしょ?」 「家族なんだから」 「今日だけお願い」 そう言われるたび、ゆいは仕事帰りに1歳のクレアを風呂に入れ、寝かしつけ、夜泣きにも起きてきた。けれど夫も義母も、それを“当然の手伝い”としか見ていなかった。 ある朝5時半、安奈は39度の熱を出したクレアを抱えて現れる。 「娘の子守りよろしく」 仕事を理由に断ろうとするゆいへ、夫は笑って言った。 「保育士なんだから慣れてるだろ。ケチくさいこと言うなよ」 その一言で、ゆいの中で何かが切れた。 なぜ安奈は、そこまで頻繁に娘を預けていたのか。 なぜ“仕事”と言って家を空ける日が増えていたのか。 そして、クレアの父親だけが知らなかった事実とは――。 便利な保育士として扱われ続けた嫁が、初めて「無理です」と告げた日、義家族の隠された嘘が静かに崩れ始める。兄弟姉妹|夫婦1.9萬字5 1259 -
完結第14話
35万円の空冷蔵庫
大晦日、妻の弓が35万円かけて用意した正月料理が、冷蔵庫から一つ残らず消えていた。 持ち去ったのは、夫・健一の母と弟。松阪牛、タラバガニ、有名料亭のおせちまで奪いながら、彼らは笑ってこう言い残す。 「明日はカップ麺でも食べてなさい」 20年間、“長男の嫁”として姑に尽くし続けてきた弓。いつか本当の家族として認めてもらえると信じ、理不尽な仕打ちにも耐えてきた。 しかし、その夜、健一は知ってしまう。食材を奪っただけでは終わらない、母と弟が5年前から隠し続けていた金の秘密を。 元日の新年会。食卓に並んだのは、豪華な料理ではなく一箱のうどんだけ。 だが、襖の向こうには親戚たちが集まり、20年間隠されてきた佐藤家の本性を静かに聞いていた――。兄弟姉妹|夫婦2.1萬字5 4303