"消えた妻と青いマグカップ" 第11話
だから婚約したには、“何で今まで言わなかったの”になるとった」
健は黙った。
「結婚したら、もっと言えなくなった」
「それで?」
「うん」
「すぎるよ」
「分かってる」
*
子供ができなかったことも、
秘密をくした。
は妊治療までまなかった。
何か自然に任せ、
そのままできることを選んだ。
健は、
子供がいないを受け入れていた。
美もそうだとっていた。
だが美のでは、
いつも別の記憶があった。
度だけ、
母親になったこと。
「私」
美が言った。
「あなたに言ったら、絶対われる気がした」
「何を」
「私には別のとの子供がいるのに、あなたとの子供はいないって」
健は眉を寄せた。
「そんなこと」
言わない。
そう言いかけて、
止めた。
本当に度もわなかっただろうか。
突然らされたら、
傷ついた勢いで、
同じことを考えなかったと言い切れるだろうか。
健は、
嘘をつかなかった。
「ったかもしれない」
美が顔をげた。
「でも、それとおを嫌いになることは別だ」
*
「紗季さんには会ったんだな」
「うん」
「どんなだった」
美は、
しだけ笑った。
「普通のだった」
「普通?」
「うん。普通の歳の女性」
健も、
し笑った。
「そりゃそうだろ」
美は、
バッグから超音波写真をした。
「赤ちゃんがいる」
「聞いた」
「女の子かどうかはまだ分からないって」
健は写真を見た。
広告
さな黒の。
何が写っているのか、
ほとんど分からない。
「これ、もらったのか」
「うん」
「そうか」
美は、
写真をしまった。
*
健は、
娘に会ったこと自体にはらなかった。
藤田を頼ったこと。
くへ戻らなかったこと。
警察までいたこと。
そこには、
まだっていた。
「誠司にも言ったけど」
健は言った。
「秘密を守るのと、きてるかどうかまで俺に分からなくするのは別だ」
「うん」
「おも同じ」
「うん」
「になりたいなら、になりたいって言え」
美は苦笑した。
「言えるかな」
「練習しろ」
「何それ」
「俺だって練習する」
「何を?」
「聞くのを」
美は、
し議そうな顔をした。
「何でも話せてるつもりだったから」
健は言った。
「俺も悪かった」
「健さんは悪くない」
「そういう話じゃない」
健は首を振った。
「何でも話せる夫婦だって、自分で勝に決めてた」
*
帰り際。
美が聞いた。
「松本に帰ってもいい?」
健は、
し腹がった。
「だから」
「何?」
「それを俺に許取るなよ」
美は目を瞬いた。
健は言った。
「帰りたいなら帰れ」
「ってるのに?」
「ってる」
「じゃあ」
「ってることと、帰ってくるなは別だ」
美は、
しばらく健を見ていた。
それから、
さく頷いた。
「帰る」
そのの夕方。
は別々ので、
松本へ戻った。
美がへ戻ったからといって、
すべてが元通りになったわけではなかった。
むしろ、
広告
そこからの方がかった。
健は、
京へ戻った。
単赴任は続いた。
平の話も再した。
ただ、
以とはし違った。
「今は何してた」
だけではなく、
健は々聞いた。
「何か話してないことある?」
美は、
「急に怖い聞き方しないで」
と笑った。
健も、
「じゃあ聞き方考える」
と言った。
*
最初の数週、
は何度も同じことで揉めた。
「どうして結婚に言わなかった」
「だから言えなかったって」
「それは分かった。でも納得は別」
「じゃあいつまでるの?」
「分からない」
そんな会話をした。
美も、
途から黙らなくなった。
「私だって、あなたが京で何考えてるか全部ってるわけじゃない」
「俺は娘を隠してない」
「そういう比べ方しないで」
言いいになった。
話を切ったもあった。
それでも、
翌にはどちらかがかけた。
*
藤田誠司は、
しばらくへ来なかった。
健も、
自分から連絡しなかった。
以の付きいだった。
だからこそ、
簡単に元通りにはできなかった。
かほどして、
藤田からメールが届いた。
【こののこと、本当にすみませんでした】
健は、
そののうちには返さなかった。
。
【美の秘密を言わなかったことは責めない】
そこまでいた。
しばらく考え、
もう。
【でも、俺に何も言わず連れてったことはまだってる】
藤田からは、
【はい】
とだけ返ってきた。
それで分だった。
*
が来る頃。
健のの湯器が故障した。
美から話が来た。
「どうする?」
「業者呼べ」
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
15年後に消えた罪
1984年、東京・世田谷の古い木造住宅で起きた火災。 亡くなったのは、72歳の老人・近藤商司だけではなかった。 焼け跡から見つかったもう一人の女性の遺体は、なぜか新聞紙に包まれ、灯油の痕跡まで残されていた。 当初、事件は老人と介護士の間で起きた悲劇として処理された。 しかし15年後、古い書類に残された一つの署名と、焼け跡に残された小さな証拠が、隠され続けた真実を再び動かし始める。 消えた500万円。 偽造された署名。 そして、誰も疑わなかった親族の存在。 長い年月を経て明らかになった、静かな住宅街の奥に隠された衝撃の真相とは――。ミステリー|行方不明1.5萬字5 126 -
完結第11話
地下室に消えた名前
旧精神療養所の解体前調査で発見された、図面には存在しない地下室。 そこには、番号だけを付けられた6人分の遺骨と、半世紀前に消された人々の記録が残されていた。 かつて「自死」と処理された女性たちは、本当に自ら命を絶ったのか。 調査を進める刑事たちは、古いカルテ、残された手紙、そして元医師の告白から、病院の地下に隠されていたもう一つの歴史へたどり着く。 しかし、そこにあったのは単なる事件の真相ではなかった。 名前を奪われ、声を失った人々と、長年沈黙を守り続けた社会の記憶だった――。ミステリー|行方不明1.7萬字5 77 -
完結第13話
嘘葬りの豆腐店
1991年、茨城の古い商店街で、豆腐屋の嫁・美香が突然姿を消した。 姑と夫が語ったのは、「男を作って夜逃げした」という話。幼い息子を置いて消えた母親として、美香の名は商店街で長く汚され続けた。 しかし6年後、借金による強制執行で高橋豆腐店が取り壊されることになる。誰も近づこうとしなかった裏手のボイラー室。そのコンクリートを掘り返した時、そこから現れたのは、色褪せたスカーフと小さな金の指輪だった。 男と逃げたはずの嫁は、なぜ自宅の床下にいたのか。 そして家族は、6年間何を隠し続けていたのか。 雨の夜に消えた母の名誉を取り戻すため、古い商店街の沈黙が少しずつ崩れ始める。ミステリー|行方不明1.9萬字5 13 -
完結第13話
消えた退院前夜
1991年5月、静岡県の総合病院で、退院を3日後に控えた43歳の女性・田中道子が忽然と姿を消した。 手術は無事に終わり、回復も順調。財布も保険証も病室に残されたまま、彼女だけが夜の病院から消えていた。 最後に確認されたのは、消灯時間の午後9時。翌朝、看護師がカーテンを開けた時、そこに道子の姿はなかった。 自ら出て行ったのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、病院の中で何かが起きていたのか。 家族は必死に行方を探し続けるが、手がかりは見つからないまま季節だけが過ぎていく。 そして8か月後、病院の監査で見つかった小さな異変が、すべてを変える。 消えた投薬記録。数の合わない睡眠導入剤。修正されたカルテ。 信じていた病院の奥で、道子に何が起きていたのか――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 9 -
完結第13話
長野中部山岳紅葉山カップル失踪事件
2019 年 10 月、韓国束草・雪岳山で忽然と姿を消した 20 代の恋人カップル。 山の監視カメラに最後の後ろ姿を残し、それきり跡形もなく消えてしまった二人。 大規模な山間捜索を何度も行ったものの、衣類の切れ端一つ見つからず、3 年間も謎のまま放置されていたこの失踪事件。 3 年後、排水溝の底から発見された一台の携帯電話。 本体に復元された記録の中に、たった 9 秒(原文 6 秒調整可)の謎の通話履歴が残っていたのです。 撮影した第三者の姿は監視カメラにも目撃談にも一切残らず、臨時インターネット電話番号からかかってきた不可解な電話。 通話直後、二人のスマホが同時に電源オフになる不可解な記録。 リュックの隠しポケットから出てきた手描き地図と謎のメモ「ここへ行けばある。17 時 25 分より前に渡るな」。 警察が調べても特定できない撮影者、地図に載っていない危険な山道、時系列が繋がる不自然な証拠たち… 長野(原文韓国束草に統一)の山に隠された、誰も想像できない真相とは? 年配の方も分かりやすく時系列順に整理した事件全貌、今すぐ全文を読んでみてください。真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 12 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 9 -
完結第13話
消えた母の 10 年地下室
1993 年、お盆の帰省途中で姿を消した若い母親―10 年後、地下室で衝撃の真実が明らかに! 隣に住む親切な青年が、彼女を長年地下室に監禁していた悪夢の物語。 幼い息子だけが地下室に隠れた母と遭遇し、守らなければならない秘密を抱える。 夫の不審な観察、祖母の疑念、犯人の焦り… 積もった疑惑がついに決定的な瞬間を迎える。 10 年間の監禁、脅迫、欺瞞が一気に暴かれる衝撃結末。 失われた家族の絆が、長い悪夢を乗り越えて再びつながるまでの全記録。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 16 -
完結第13話
マカオに消えた花嫁
2010年4月、マカオへ新婚旅行に訪れた日本人夫婦・田中浩司と山田愛子は、ホテルに荷物を残したまま忽然と姿を消した。 最後に確認されたのは、観光地の監視カメラに映った2人の姿。部屋に争った形跡はなく、財布も荷物もそのまま。誘拐か、事故か、それとも自ら消えたのか――事件は真相不明のまま、12年という歳月に埋もれていった。 しかし2022年、1人の女子大生がSNSで見つけた写真が、凍りついた時間を動かす。 マカオの街で中国人女性と寄り添う中年男性。その顔は、12年前に失踪したはずの夫・田中浩司に酷似していた。 では、彼と一緒に消えた妻・愛子はどこへ行ったのか。 幸せな新婚旅行の裏で、あの夜、本当は何が起きていたのか。 SNSに映った“夫の顔”が、12年間隠されてきた衝撃の真実を暴き出す。ミステリー|真実|行方不明2.0萬字5 1