"消えた妻と青いマグカップ" 第10話
「今に連絡してください」
美は頷いた。
それでも、
藤田が松本へ戻ったあと、
数けなかった。
*
午。
ようやく警察へ話した。
本であることを確認され、
全であること。
藤田に制されていないこと。
自分ので宿にいること。
つずつ答えた。
最に、
「ご主に所を伝えますか」
と聞かれた。
美は、
しばらく黙った。
「今は、まだ」
そう答えた。
話を切ってから、
自分でもひどいとった。
健は、
何もらない。
娘のことも。
潟へった理由も。
自分がなぜ帰れないのかも。
それでも、
今すぐ話をすれば、
言えなかったことを、
話本で説しなければならない。
美には、
まだできなかった。
*
曜の夜。
携帯話に、
健からしいメールが届いた。
【ってる】
【でも帰ってきてほしい】
美は、
初めて返信画面をいた。
何度も消した。
最に残ったのは、
たっただった。
【、話します】
送信したあと、
美はく息を吐いた。
曜。
午。
健の携帯話が鳴った。
画面には、
美の名。
瞬、
られなかった。
待ち続けた話だった。
なのに、
いざ鳴ると怖かった。
健は回目の呼びし音で、
通話ボタンを押した。
「もしもし」
『……健さん』
美の声だった。
健は目を閉じた。
「きてるな」
『うん』
「怪ないな」
『ない』
「?」
『うん』
それだけ確認してから、
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健は黙った。
美も黙った。
*
最初に謝ったのは美だった。
『ごめんなさい』
健は、
すぐには答えなかった。
「誠司から聞いた」
話の向こうが静かになった。
「娘のこと」
『……うん』
「名も」
『そう』
「のに産んだことも」
『うん』
健は、
何度目か分からないほど、
同じ疑問をにした。
「何で俺に言わなかった」
美は答えなかった。
「だぞ」
『分かってる』
「結婚するも?」
『言おうとった』
「いつ」
『何度も』
「でも言わなかった」
『うん』
健は、
く言いすぎないようにしていた。
それでも、
声にはりがた。
「俺だけらなかったんだな」
『……そう』
「誠司はってた」
『うん』
「それが番きつい」
美が、
さく息を吸った。
*
『藤田さんが悪いんじゃない』
「分かってる」
健は言った。
「でも腹はってる」
『私が頼んだの』
「それも分かってる」
『だから』
「分かってるって」
声がきくなった。
健は度、
を閉じた。
「分かってるから、余計に嫌なんだよ」
美は黙った。
「おが俺には言えなくて、誠司には言えたことが」
『あのには、偶然られただけ』
「そのあと、ってただろ」
返事はない。
健は続けた。
「娘が連絡してきたも、俺じゃなくて誠司を頼った」
『でけなかった』
「俺とく選択はなかったのか」
美の声が、
し震えた。
『あなたに言ったら、全部変わるとった』
「変わるよ」
健は即答した。
美が黙った。
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「変わるかもしれない」
健は言い直した。
「でも」
度、
息を吸った。
「変わるかどうかを決める会くらい、俺にもくれよ」
*
美は、
泣いていた。
声で分かった。
『怖かった』
「何が」
『あなたが私を見る目が変わること』
「それは変わるかもしれないって言ってるだろ」
『だから怖かったの』
「でも隠したら、もっと変わるだろ」
美は何も言えなかった。
その通りだった。
*
しばらくして、
健が聞いた。
「帰ってくるのか」
い沈黙。
美は、
『分からない』
と答えた。
健は、
る気力さえ瞬なくなった。
「何で」
『帰っていいのか分からない』
「誰が決めるんだよ」
『え?』
「俺か?」
『……』
「俺が“もう帰ってくるな”って言うとってるのか」
『分からない』
「じゃあ勝に答えすなよ」
健の声がくなった。
「帰れるかどうかまで、おで決めるな」
*
翌。
は野駅くの喫茶で会うことになった。
健が松本から向かった。
美は、
宿からで来た。
数ぶりに見る妻は、
し痩せたように見えた。
健は、
顔を見た瞬、
抱きしめたいとった。
でも、
できなかった。
美も、
づかなかった。
「久しぶり」
美が言った。
健は、
「だけどな」
と答えた。
とも笑わなかった。
*
美は、
最初から全部話した。
歳の妊娠。
相の男。
両親。
産。
養子縁組。
娘を抱いたこと。
写真。
母親の、
藤田ので秘密を話したこと。
健は、
途で何度も止めた。
「結婚する、何で言わなかった」
美は答えた。
「最初に言わなかったから」
「どういう」
「付きい始めに言わなかった。
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