"断髪新郎の逆転婚礼" 第2話
「俺は気にしないし、美紀も事ってるからな。そのままでもいいだろ」
「でも美紀さんのご両親とは初対面だよ。いきなりニットっていうのも……」
兄は「気にしすぎだ」と言ってくれたが、私はやはり落ち着かなかった。
そこで翌、デパートにある医療用ウィッグの専へってみることにした。
気が悪かったこともあり、デパートへ向かうバスはかなり混んでいた。私は吊り革につかまりながらっていたが、途で目のの2掛けの席が空いた。
ようやく座れるとって体をかした、そのだった。
「あ、席空いたわ。ひろみさん、ほら、こっち」
50代くらいの女性が私の横から体を滑り込ませるようにして、先に座席へ腰をろした。
「ひろみさん、くく」
呼ばれた女性は私に申し訳なさそうに軽くをげ、隣へ座った。
し驚いたが、私は何も言わなかった。
すると最初の女性は、周囲の乗客にも聞こえるほどきな声で話し始めた。
「座れてよかったわね。今は混んでるからどうなることかとったけど、ちょうど空くなんて。きっと頃のいがいいのよ」
「それにしても、礼子さん。急にデパートに付きってって、どうしたの?」
ひろみさんと呼ばれた女性が尋ねると、礼子という女性は待ってましたと言わんばかりに胸を張った。
「それがね、娘が結婚することになったの」
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「あら、おめでとう」
「それで今度、お相のご族と顔わせがあるから、そのに着るを買おうとって」
私は聞くつもりなどなかった。
ただ、あまりにも声がきいので自然にへ入ってきた。
「相ってどんななの?」
「流ホテルのシェフですって。しかも族は妹さんだけなのよ」
私はわず顔をげた。
「ご両親はもうくなってるんですって。だから面倒な親戚付きいもないし、娘が向こうの親の介護をする必もない。まさにいい相を捕まえたってじよね」
流ホテルのシェフ。
両親はくなっている。
族は妹だけ。
あまりにも兄の状況と致していた。
まさかといながら、私は目のの女性を見つめてしまった。
すると私の線に気づいたらしく、礼子さんがこちらを振り返った。
「あら、やだ。こっち見てるわ」
私は慌てて目を逸らした。
けれど女性は、私に聞こえるような声で隣の友へ話し続けた。
「きっと結婚の話なんかしたから、羨ましいのね」
「礼子さん」
「だってあの、どう見ても結婚できそうにないもの」
私は瞬、何を言われたのか分からなかった。
礼子さんは私のをじろじろ見ながら、さらに言った。
「ほら、見てよ。きっと髪がないのよ。あんなんじゃ結婚なんて無理よね」
胸の奥がく締めつけられた。
ひろみさんが慌てて礼子さんの腕を引いた。
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「ちょっと、言いすぎよ」
「だって向こうが睨んできたんだから」
やがてバスはデパートへ到着した。
礼子さんは友に促されるようにりていった。
私もバスをりたが、そのからすぐにはけなかった。
髪がないだけで、どうして私のまで決めつけられなければならないのだろう。
結婚できない。
その言葉だけが胸のに残った。
ウィッグを見る気持ちも失せてしまい、私はしばらくデパートの入付でち尽くしていた。
けれどが経つにつれて、しずつ腹がってきた。
らないに何を言われても、私のには関係ない。
あのにもう会うことなどないだろう。
そう自分に言い聞かせ、私は結局ウィッグを買わずにへ帰った。
顔わせのは、シンプルなワンピースに、くなった母の形見であるスカーフをへ巻くことにした。
ニットよりもきちんとして見えるし、何より母も緒に連れてけるような気がした。
ところが顔わせ当。
待ちわせので、美紀さんの両親を紹介された瞬、私は息を呑んだ。
「初めまして。川崎健太の妹の彩佳です」
「林美紀の父です。こちらは妻の礼子です」
私の目のにいたのは、あのバスで私を見した女性だった。
礼子さんもすぐに私へ気づいたらしい。
挨拶を済ませるなり、私のへあからさまな線を向けてきた。
「ねえ、こんなこと聞いて悪いんだけど」