"断髪新郎の逆転婚礼" 第1話
私は川崎彩佳、28歳。
族と呼べるは、4歳の兄・健太だけだった。両親は私がの頃、2そろって交通事故でくなり、それ以来、兄と私はずっと2で支えって暮らしてきた。
「お兄ちゃん、また靴を裏返したまま洗濯に入れたでしょ」
ある朝、洗濯物を取りしながら声をげると、リビングにいた健太が聞から顔をげた。
「え? ああ、ごめん、ごめん」
「毎同じこと言われてるのに、なんで直らないの」
私はため息をつきながら靴を表に返した。兄は悪びれた様子もなく、コーヒーカップをにして肩をすくめた。
「別に直さなくても活には支障ないだろ」
「汚れだって落ちにくいし、干すに私が直すの面倒なんだけど。こういうさいことをいつまでも直せないと、結婚してから婚されるよ」
「縁起でもないこと言うなよ」
兄は苦笑したが、その言葉には以とは違う現実があった。
健太には婚約者がいた。
林美紀さん。兄が勤めている流ホテルでりった女性で、仕事は美容師をしている。兄よりしで、るく柔らかな雰囲気を持つだった。
兄たちの結婚式は、すでに1かに迫っていた。
「結婚したら、このはるんでしょ?」
夕の、私は何気なく尋ねた。
兄は瞬だけ箸を止めた。
「え? ああ……どうしようかな」
「どうしようかなって、ないの?」
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私たちがんでいるのは、父がに購入した古の軒だった。両親がくなってからも兄と2でみ続け、私にとっては族との記憶が詰まった切な所だった。
けれど兄が結婚すれば、事は変わる。
「美紀さんと婚になるんだから、2で暮らした方がいいんじゃない? もしお兄ちゃんが美紀さんとここにみたいなら、私がるけど」
「ああ、そういうことじゃないんだ」
健太は困ったようにを掻いた。
「おを1にするのがな」
「何言ってるの。私、もう28歳だよ。じゃないんだから、1で活くらいできるって」
「でもな……」
そこで兄が言葉を濁した理由は分かっていた。
私の体のことだ。
私は半、乳がんが見つかった。
幸い期発見だったため、医師からは命に関わる状態ではないと説されていた。しかし治療は続いており、抗がん剤の副作用で、髪のほとんどが抜け落ちていた。
体調もしまでは定せず、常活を送れるようになってきたのは本当につい最のことだった。
「私の体調が配なんでしょ?」
私が尋ねると、兄は黙ったまま私を見た。
「丈夫だよ。何かあったらすぐ連絡するし。それより、お兄ちゃんは結婚したら美紀さんを1番に考えなきゃ」
「それは分かってるよ」
「じゃあ決まり。結婚したらこのをてください」
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私はわざとるく言い切った。
「物件探し伝おうか? 駅で、向きで、それから――」
「もういい。それは美紀とちゃんと話して決める」
兄が苦笑すると、私は満して頷いた。
両親を失ってから、兄は私を守ろうとしてくれた。私もそんな兄を頼りにしてきた。
けれど、いつまでも同じではいられない。
兄にはこれから、美紀さんとのしい庭ができる。
私はそれをから嬉しくっていた。
だからこそ、兄の結婚式であんなことが起こるなんて、そのの私は像もしていなかった。
私は美紀さんとは何度も会っていたが、美紀さんの両親とはまだ面識がなかった。
結婚式の約2か、両の顔わせが予定されていた。がづくにつれ、私は装よりも自分ののことが気になり始めた。
普段はニットをかぶって活している。
しかし、さすがに族同士の正式な顔わせへ普段使いの子をかぶっていくのはどうなのだろう。
私はリビングでテレビを見ていた兄へづいた。
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「今度、美紀さんのご族と顔わせがあるでしょ。私、どんな格好でったらいい?」
兄はテレビから線をし、私をからまで眺めた。
「ワンピースとか、そういうしフォーマルな格好でいいんじゃないか?」
「はそうなんだけど、髪型」
私は自分のを指差した。
「さすがにこれじゃ駄目だよね」
ニットのには、く残った髪がわずかにあるだけだった。
兄はし考えたが、すぐに首を振った。