"白タク墓参り" 第2話
このの私はまだらなかった。
くなった夫と息子が残してくれたものが、そののうちに私たち3を守ることになるとは。
墓ので馴染みのタクシーをりると、見慣れないいが段の脇へまっていた。
助席から部座席の半分ほどまで段ボール箱が積まれ、運転席には50代ほどの男が座っていた。私たちがづくと男は窓をげ、のいい笑みを浮かべた。
「お参りですか?」
「ええ」
「お帰りのがお決まりでなければ、私がお引き受けしますよ。藤波と申します」
噂で聞いたタクとは、この男のことかもしれない。
親切というにはし押しがい気もしたが、帰りのがなくなったばかりだった。私は男の顔を度見ただけで、そのではく考えなかった。
段へ差しかかると、美がすかさずを伸ばしてきた。
「ほら、すりにつかまってください。転ばれても私は担いでりられませんからね」
「寄り扱いはおよしなさい。私は68でも、段の1つや2つ」
「どうぞ、お好きに言ってください。そんなにきされたら、こっちのが持ちませんから」
「あら。根をげるのはあなたが先よ。あなたよりきしてやるんだから」
私たちのやり取りを聞いて、藤波がわずかにこちらを見た。
段のでは、柚がしゃがみ込んでいた。何をしているのかとえば、さな帳のようなに、まっているのナンバーを数字の絵のようにき写している。
広告
「柚、何してるの?」
美が声をかけると、柚は得そうにを見せた。
「数字のお絵描き」
最、端で見かけるの番号をき写すのが遊びになっているらしい。数字だけはそれらしくけるようになったものの、横に並ぶ名はぐにゃぐにゃした線になっていた。
妙なところで真面目な子だ。
私は笑いながら柚のを撫で、3で段をがった。
墓へ着くと、美は桶を持ってへ向かった。古いを捨て、桶を洗い、澄んだを張り直して戻ってくる。
そのつきを、私は何となく目で追っていた。
「ばあば、お、柚が持つ」
柚が私の袖を引いた。
私は抱えていた菊の束をさな腕へ渡し、落とさないよう緒に支えた。袖越しに伝わってくる孫のの温かさに、胸がしだけ緩んだ。
線を供え、3で静かにをわせた。
隆志と誠。
2の名をので呼ぶと、毎同じ所へ来ているはずなのに、胸の奥にある空洞だけはまだ埋まらない。
をわせ終えた、美が墓を見たままぽつりと言った。
「再発の話、まだ続いてるんですか?」
私は瞬だけ目を伏せた。
「ええ。売らずに残っているのは、もううちだけみたい」
私が暮らしているの周辺では、数から規模な再発計画がんでいた。隣の々は次々にを売却し、ち退いていったが、私は何度交渉を受けても首を縦には振らなかった。
広告
「あそこは隆志さんと2で建てただからね」
私は墓へ目を向けた。
「名義も私。私がうんと言わない限り、誰にもかせないわ」
美は何も言わなかった。
ただ、墓に残っていた枯れ葉をで拾い、線ての周りを静かにえていた。
墓参りを終えて段をりると、先ほどのいがのすぐまで移して待っていた。
帰りのき先すら伝えていないのにとったものの、がし疲れていた私は、ついへ向かってしまった。
「この子を先に乗せますね」
美が柚の肩へを置いただった。
藤波が素くをり、部座席の扉をいた。
「ご覧の通り、荷物で席が1つしか空いておりません。それに、お子さんを乗せるチャイルドシートもありませんので」
「だったら別のを――」
「奥様だけ先にどうぞ。お2はの便でお迎えにがりますから」
言葉が終わるより先に、藤波は私の背を押すようにして部座席へ誘導した。
「ちょっと」
私は戸惑ったが、すぐにから扉が閉まった。
美が瞬迷った表を見せた、何かに気づいたように顔を変え、扉へ駆け寄る。
「待ってください!」
しかし藤波は美のを振り切るように運転席へ乗り込み、そのままを発させた。
砂利がねた。
「お母さん!」
美の声がろから響いた。