"夫の顔と20年目の罪" 第1話
を失った私にとって、きる希望は2つあった。
1つは音楽。
そしてもう1つは、あなたのだった。
い、私はずっと願っていた。
いつかこの目で、あなたに会いたい。
あなたがどんな顔をしているのか、どんな表で笑うのか、どんな瞳で私を見てくれるのか。像するだけで胸がくなり、暗のでもにめる気がした。
「やっと見えるんだね」
病ので、するのものだとっていた優しい声が聞こえた。
包帯をされたばかりの私は、眩しさに目を細めながら、その声のする方へ顔を向けた。20ぶりに戻ってきたは、あまりにもく、世界の輪郭はまだぼんやりとしていた。
けれど、しずつ界がっていく。
い井。
ホテルのようにえられた病。
窓際に置かれた瓶。
そして、私のにつ男性。
その顔を見た瞬、たい覚が全を駆け巡った。
「……どういうこと?」
声が震えた。
あれほどこのを待ち望んでいたはずなのに、私の胸に込みげてきたのはびではなかった。
恐怖だった。
私の名は桜田はるか。28歳。
ピアニストとして活している。
父は全国にられた産会社を営んでいた。私はその資産の娘としてまれ、きな敷で育った。実には何もの使用がいて、幼い頃からの回りのことを誰かがえてくれる環境だった。
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お持ちのお嬢様と聞けば、何自由なく暮らしてきたとわれるかもしれない。
けれど、私のは決して穏やかなものではなかった。
私は、血の滲むような苦労と努力のできてきた。
私の母は、音楽界で名な才ピアニストだった。台につ母の背は、幼い私にとって何より美しかった。ドレスの裾が揺れ、指先から音がこぼれ、客席が静まり返る。その全てが、私にとって憧れそのものだった。
物つくから、私は母の隣でピアノを練習し始めた。
最初はさなで鍵盤を叩くだけだった。けれど、母はいつも根気よく私のを包み、音のし方を教えてくれた。
「はるか、音はね、ただ鳴らすものじゃないの。を乗せるものなのよ」
母の声は、今でもの奥に残っている。
私は幼児コンクールで優勝するほど達した。周囲のたちは私を褒めた。母の才能を受け継いだ子だと言われるたび、私は嬉しくて、もっと練習した。
忙しくも幸せな毎だった。
けれど、その幸せは突然壊れた。
私が8歳のだった。
母と買い物にかけていた帰り、私たちは運にも危険運転のに遭遇した。
タイヤの擦れる音。
母が私の名を叫ぶ声。
く抱きしめられる覚。
そして、体が面に叩きつけられる衝撃。
母は私をかばった。その代わりに傷を負い、病院に搬送された、そのまま帰らぬとなった。
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私は命だけは取り留めた。
けれど、角膜にい損傷を負い、力を失った。
8歳で、最の母とを同に失った。
私の世界は、真っ暗になった。
母のいない敷は、広すぎた。廊を歩く音がく響き、誰かがづいてくる気配だけが頼りだった。卓に並ぶ料理の匂いも、使用たちの気遣う声も、すべてがい所の来事のようにじられた。
私は毎泣き暮らした。
事もまともに取れず、体はしずつ痩せていった。眠ろうとしても、瞼の裏に事故の音がよみがえり、母の声が聞こえるような気がして、何度も布団ので震えた。
そんな私を、父はずっと配してくれていた。
ある、父が私の部にやってきた。
ドアのく音がして、ゆっくりとした音がづいてきた。ベッドの端が沈み、父が腰をろしたのが分かった。
「はるか」
父の声は、とても優しかった。
「もう度、ピアノをやってみないか?」
私は布団を握りしめた。
母がくなってから、私は度もピアノに触れようとしなかった。楽譜は読めない。鍵盤の位置も、昔のようには見えない。今までのように弾けるはずがないとっていた。
「無理だよ」
私はさく言った。
「もう、見えないもん」
すると父は、しばらく黙った、私のを取った。
「見えなくても、音は消えていない。お母さんが君に残したものも、消えていない」
父のはきく、温かかった。
「はるかがまた笑えるなら、お父さんは何でもする。