"大正、子守奉公の少女" 第18話
届いた
帰国して半ほどが過ぎたころ、私宛てに通のが届いた。差の名には見覚えがあった。旅順で働いていたのだった。私は台所の仕事を終えてから自で封をけ、ゆっくりと文字を追った。読み違えないように何度も確かめたが、内容は変わらなかった。
もう度、旅順へ来てほしいという誘いだった。
には、向こうで私を必としているがいること、仕事の条件を相談したいことがかれていた。私はすぐには返事をかなかった。本へ帰ってきたばかりで、またを渡るなど考えていなかったからだ。
けれど、を引きしにしまっても、何度も取りして読んだ。いで私の働きを覚えていてくれたがいる。そのことが、いのほか嬉しかった。
今の奉公先では、事と子守りの両方をこなしていた。忙しさは旅順にいたころ以で、休みも取りにくかった。女主に悪気があるわけではない。には子どもがいて、毎やらなければならないことがほどあるのだ。
けれど私が夜遅くまで働いても、誰かがそれを特別なことだとう様子はなかった。
ある夕方、私は子どもの着物のほつれを直していた。針目を見た女主は「そんなに細かく縫わなくてもいいよ」と言った。私はを止めた。
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旅順の奥様は、急げばあとで余計にがかかると教えてくれた。
今のでは、し荒くてもく仕げる方がばれる。どちらが正しいということではない。それでも、自分が事にしてきた仕事の仕方が、このでは必とされていないようにじた。
私は返事をくに、旅順から届いたの条件をもう度読み直した。料のこと、仕事の内容、む所。分からないところには印をつけ、尋ねる文を添えて返事をした。昔なら、必としてくれるというだけで荷物をまとめていただろう。
けれど、働く所が変われば暮らしも変わる。何を引き受けるのか、自分でっておきたかった。
数週、返事が届いた。私の質問にはつずつ答えがかれていた。私はそれを読んで、旅順へ戻る気持ちを固めた。今のを嫌いになったからではない。向こうで私ができる仕事があり、条件を確かめたうえで自分がきたいとったからだ。
誰かの望みと自分の望みが、初めて同じ方を向いているようにじられた。
私は旅順からの誘いを受けることに決め、そのことを故郷の母へらせた。もう度を渡るつもりだ、と。母からの返事には、体を切にするようにという言葉があった。以のように、のために稼いでほしいとはかれていなかった。
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父がくなり、きょうだいたちもそれぞれ働くようになった。母の言葉が変わったのか、私が変わったのか、分からなかった。
私は今の奉公先の女主に、辞めたいと切りそうとした。しかし子どもが泣き、来客があり、台所のを見なければならず、話す会を逃した。ようやくをいたとき、女主は「今、辞められたら困るよ」と言った。
私はその言葉にかった。歳からずっと、誰かに必とされることで働いてきた。困ると言われれば、断ることができなくなる。
その夜、私は帳面をいた。送ったの記録、覚えた文字、ったことのある町の名が並んでいた。私はこれまで、誰かに望まれるたびにを移ってきた。けれど今度のには、私自が返事をすることができる。そう考えると、胸のにさながともった。
翌朝、女主からまた「辞める話はもうし待って」と言われた。私は頷きかけ、途でを閉じた。待っているうちに、旅順へ向かうの便は過ぎてしまう。今度こそ自分で決めなければならない。私はそののうちに、もう度話をすることにした。