"大正、子守奉公の少女" 第16話
円の為替
旅順での料は、円から円銭にがった。奥様に告げられたとき、私は嬉しくてすぐに礼を言った。銭はではなかったが、私の仕事を見てくれているがいることがありがたかった。私はそのから、円を貯に回すと決めた。
残りで必なものを買い、できるだけ無駄をさないようにした。
貯が円になると、私は故郷へ送った。郵便の続きをするたびに、所と名を慎に確かめた。以ならに読んでもらった字を、今は自分で追える。窓のに尋ねられても、落ち着いて答えられるようになった。
を送るだけの用事なのに、私はその帰り、し背筋を伸ばして歩いた。
母からはい返事が来た。「根の傷んだところを直せそうだ」。その文を読んだとき、私は故郷のをい浮かべた。のには桶を置いていた所、になるとが吹き込んだ隙。
私はく旅順の敷で子どもの世話をしながら、あの根のの瓦や板をしずつ取り替えているのだとった。
ある、男の子が「おを送ったら、何か買ってもらえるの」と尋ねた。私が貯の帳面を見ていたからだろう。私は「の根を直すんだよ」と答えた。男の子は首をかしげ、「根は自分で直せないの」と聞いた。
私は笑って、を直すには材料ものもるのだと説した。
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子どもにとって根は、最初からを防いでくれるものだった。私にとっては、働いたでようやく直せるものだった。
円を送るたび、私は帳面に付と残をいた。違えないよう、窓でもらった控えを切にしまった。ある、計算がわず、私は夜遅くまで貨を並べ直した。原因は自分が買った糸代をき忘れていたことだった。私はその額を追記し、ほっと息をついた。
ののを扱うときは注くしていたのに、自分ののことは曖昧にしていたと気づいた。
奥様に帳面を見せると、「きちんとつけているのね」と言われた。私は恥ずかしさをこらえて、まだ字を覚えている途だと話した。奥様は帳面の端に、付と額を揃えてく方法を教えてくれた。
私はそれを真似した。送ったがの根になり、覚えた字が帳面になり、働いたがしずつ形になる。そううと、いもより確かなものにじられた。
それからしばらくして、故郷から根の修理が終わったというらせが届いた。母は職が来たのことを細かくいてくれた。私は何度もを読み、帳面のに挟んだ。自分の働きが形になったと分かるのは、嬉しかった。
けれど同に、今までへ送ったがいくらになったのか、自分が何働いたのか、ふと数えてみたくなった。
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歳で奉公にてから、故郷で過ごしたはほんのわずかだった。子守り先、、京の敷、そして旅順。どのにも、私がした仕事を覚えているはいるだろう。しかし私自は、働いた所をれるたびに、何かを置いてきた気がした。
母へ送ったの記録だけでは、そのを全部数えることはできなかった。
ある晩、奥様が私に「あなたもしは自分のために使いなさい」と言った。私は笑って「困っていませんから」と答えた。けれど部へ戻ると、昔、京の先で見たさな鏡のことをいした。今なら買えるかもしれない。
そうっても、すぐにへく気にはなれなかった。欲しいものを選ぶことに、私はまだ慣れていなかったのだ。
次の休み、私は町でさな櫛を買った。価なものではない。歯の揃った、に収まるだけの品だった。部で髪をとかしていると、窓のから子どもたちの声が聞こえた。
へ送るを減らさずに、自分のためのものをつ持てた。それが議に嬉しくて、私は櫛を丁寧に布で包んだ。