みかん小説
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"大正、子守奉公の少女" 第12話

つの部

旅順の敷は、私がっているのどれとも違っていた。廊を曲がるとまた部があり、窓から入るの向きも所によって変わる。最初の数は、どの部へ何を運ぶのか覚えるだけで精いっぱいだった。私には畳ほどの部が用されていた。

荷物を置いてもまだ畳が広く残り、私は部の真んに座って、しばらくけなかった。

には国の伝いのや、ボーイと呼ばれる使用がいた。私は最初、相の言葉がほとんど分からず、何か頼まれるたびに首をかしげた。向こうも私の言うことが分からない。

それでもを運ぶつきや、を扱う順番を見ているうちに、しずつ互いの仕事が分かるようになった。名を覚えることから始め、物を指さして言葉を尋ねた。

ある朝、私が桶を探していると、の国の使用が笑って棚を指した。私は礼を言い、そのが使った言葉をので繰り返した。うまく発音できず、また笑われたが、嫌な笑いではなかった。次の、私が同じ言葉を使うと、相はすぐに桶を渡してくれた。

通じる言葉がひとつ増えるだけで、敷はし狭くじられた。

私の主な仕事は、の子どもの世話だった。の男の子は学で、毎朝学へ送っていく。の女の子はまだ幼く、兄のを追いたがった。

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私は片方ので男の子のを引き、もう片方で妹の子を直した。

赤ん坊を背負って歩いたのとは違うが、子どもの歩幅にわせることは体が覚えていた。

学へのを覚えたころ、男の子が急にりし、私は慌てて追いかけた。彼はの向こうにりいを見つけただけだったが、私はの通る方を見てひやりとした。翌から私は、曲がり角では必ずち止まり、子どもと緒にを確かめることにした。

男の子は最初面倒がったが、私が理由を説すると守ってくれた。

帰り、彼は「本のにもこんながあるの」と尋ねた。私は畑のの細いや、のあとだらけになる坂のことを話した。彼は驚いて「靴が汚れちゃうね」と言った。私は笑った。

子どもがっている世界と、私が育った世界は違う。だからこそ、互いにらないことを話せる。私はこの子の世話をしながら、自分の故郷を言葉にして覚え直していた。

学へくには、見慣れないや板があった。男の子は々ち止まって、私に字を読んでほしいとせがんだ。私は絵や品物の形で何のか見当をつけ、「あそこはお菓子さんでしょう」と答えた。けれど板の文字を指さされると、途端に困った。

子どもは議そうに「らないの」と尋ねる。私は笑ってごまかしたが、胸のにさな棘が残った。

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が来ると、敷のか所にあるペチカにが入った。では頬が痛むほどたいが吹き、袋をしていても指先がかじかんだ。私はの具を確かめ、子どもたちの着を用した。

かい部へ戻ると、窓ガラスがく曇っている。そこに指で線を引いて遊ぶ子どもたちを見て、私はい故郷のをいした。

故郷のには、こんなきなも、私だけの部もなかった。けれど敷が広くなったからといって、寂しさまでなくなるわけではない。夜、自へ戻ると、廊の向こうから聞こえる話し声が急にくなる。私は荷物の底から古い布巾と帳面を取りし、机の端に並べた。

自分のものがそこにあると、ようやく眠る所を見つけた気がした。

ある晩、男の子が寝るに絵本を抱えてやってきた。「これ、読んで」。私は本を受け取った。表には楽しそうな絵が描かれていたが、の文字はほとんど読めなかった。子どもの目は期待で輝いている。私は初めて、字が読めないことを隠し続けるのは難しいとった。

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