みかん小説
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"大正、子守奉公の少女" 第1話

度の飯

「泣かせないようにしておくれよ。うちの子は、背に乗せればおとなしいから」

そう言って赤ん坊を渡されたとき、私はだった。赤ん坊の母親は私よりずっと背がく、掛けの紐を結び直すつきに迷いがなかった。

私は自分の肩よりきな呂敷を背負うことなら慣れていたが、まだ首も分に据わらない赤ん坊を背負ったことはなかった。

背に伝わるが怖くて、しばらくそのからけなかった。

母は隣にっていた。から持たせてくれたのは、着替えの入ったさな包みと、継ぎを当てた袋だけだった。

母が何か言うのを待ったが、代わりに奉公先の女主が「朝昼晩、飯はべさせる」と告げた。

度の飯。それがこのに私を置く条件だった。

私はきょうだいの番目だった。卓といっても、囲むのは使い古したい台で、飯茶碗は数分揃っていなかった。畑仕事のがりない季節には父も母も暗いうちからていき、の子から順にの子の面倒を見た。

私がよそのへけば、実では分のが減る。母が何度も繰り返したのは、それだけだった。

役の帳面に記された私のまれは、実際より遅れていた。父と母は忙しくて届けを回しにし、そのままが過ぎてしまったのだという。

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では誰もがその事をっていて、困るときだけ帳面の齢を持ちした。

私自は数え方などよく分からなかったが、赤ん坊を背負わせるには分きいと見なされたことだけは分かった。

母は帰り際、私の襟を度引っ張って直した。

「ご飯を残すんじゃないよ。言われたことは、よく聞くんだよ」。

それは励ましというより、で何度も聞かされた決まりごとの続きだった。

私は「うん」と答えたが、母の背がの向こうへ消えるまで見送ることは許されなかった。赤ん坊が泣き始めたからだ。

「ほら、歩いて。っているから泣くんだよ」

私は庭にて、のをさく往復した。元にはまだ朝が残り、背では赤ん坊が体を反らせて泣いている。泣き声が止むまで何度歩いたのか覚えていない。やっと静かになったころ、井戸のそばの桶に映った自分の顔を見た。額に髪が張りつき、肩の紐はい込んでいた。

昼飯にはい飯がた。では麦の混じった飯でもありがたかったから、茶碗を見た瞬、腹が鳴った。ところが箸を持ちかけると、奥から赤ん坊の声がした。「先にあの子を頼むよ」。

茶碗を置いてちがったとき、度の飯をもらえるという約束には、べる刻までは含まれていないのだとった。

奉公先の女主は、私に赤ん坊の着物の替えを置く棚を教えた。

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そこには柔らかな布が何枚も畳まれていて、どれも私の着ているものより等だった。私は汚したら変だとい、枚取るたびにを洗った。

女主はそんな私を見て「赤ん坊のものだから、汚れて当たりだよ」と言った。私は議だった。では布を汚せば洗うも薪も惜しかったのに、このでは赤ん坊のためにいくらでも使えるように見えた。

によって暮らしがこれほど違うのだと、私は着物の棚ひとつから学んだ。

夕方、女主から赤ん坊の名を呼ぶように言われた。私は何度もさく呼んだが、その名は私のきょうだいの名とは違って、まだになじまなかった。やがて赤ん坊が振り向くと、女主は初めてし笑った。私にもできることがある。

そうえたのは嬉しかったが、その笑顔を見たくて、翌から私はますます休むことを忘れた。

夜、布団に入るころには腕をげるのもつらかった。母の顔をいそうとしたが、先に浮かんだのは、昼に置いたままめてしまったい飯だった。もべられるだろうか。

そう考えているうちに眠り、夜に赤ん坊の声で起こされた。私の奉公は、そうして始まった。

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