"昭和62年、国鉄最後の日に駅弁を一つ売らなかった理由" 第15話
親子で違う
、誠は国沿いの舗を借りるのをやめた。
からしい条件が届き、最初に考えたより費用がきくなったからだ。誠は計算し直し、夜までを見つめたあと、翌朝自分で断りの話をした。
「悔しい?」
私が聞くと、息子は笑わなかった。
「悔しいよ。母さんに駅をろって言っておいて、自分はの所にこだわってた」
「いい所だとったんでしょう」
「そう。でも、いい所と、払える所は違う」
私は黙ってお茶を入れた。息子が自分で決めたことを、慰めるのも褒めるのも違う気がした。
「母さん、俺の考えたこと、全部違ってた?」
「そんなことない。配達のを計算したのは誠だし、の注文を取る方法も緒に考えたでしょう」
「じゃあ、駅のでやる、俺にも伝わせてくれる?」
「伝うって言い方はやめよう。やるなら、何を任せるか決める」
誠はし笑った。
「相変わらず厳しいな」
「今までが甘すぎたの」
誠は会社をすぐに辞めないことにした。しばらくは休と朝のいに配達計画を見て、注文が定してから働き方を変える。料が減るなら、その分の暮らしをどうするか、妻の真紀とも話しうという。
「真紀さんには、もう話したの?」
「昨、全部見せた。借の話も」
そのの夕方、真紀さんが買い物帰りに寄った。
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にはスーパーの袋と、さな計簿があった。
「誠さん、独したら朝から晩まで働くつもりみたいです。でも、うちにはうちの活があります。何曜に休むのか、いくらに入れるのか、それを決めてからにしてほしいんです」
私は頷いた。息子のを応援することと、真紀さんに全部を任せることは違う。
「その話、私からも誠にする」
「お義母さんから言われるとになるから、私が言います」
真紀さんはきっぱり言った。私はわず笑った。
「何て言ってた?」
「はいいけど、賃の数字を見ないなら、ただの昼寝だって」
私は声をして笑った。真紀さんは町の信用庫で働いている。おの話になると、息子よりずっと現実だ。
そのの午、私はフミさんにからの勤務表を見せた。
「週、朝から。駅の販売がなくなる分、く帰れるもある。料は今までよりし減るけど、ここまでなら約束できる」
フミさんは鏡をかけ、をじっと読んだ。
「澄さん、私を辞めさせる気はないんだね」
「ない。でも、無理に残ってほしいとも言えない」
「じゃあ、やるよ。にいても夫と喧嘩するだけだし」
美さんにはから午までの勤務をお願いした。彼女は確認を受け取り、保育園にせると笑った。
私がほっとしたのも束の、良治が台所の戸で言った。
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「澄、からの注文がなかったら、俺の料は回しでいい」
「だめよ」
「俺たちは族だろ」
「族だからこそ、仕事を数えるの。払えないなら、仕事の量を減らす」
良治は困った顔をした。
「俺、何をすればいいんだ」
「まず、にを片付けること。それから、しい配達表を作ること」
夫は頷いた。腰を痛めてから、自分がまといになっているとっていたらしい。私はそのことにも、く気づかなかった。
夕方、駅へくと、売のに取りしの程が貼られていた。
《 営業終撤準備》
以見慣れたの棚が、急にさく見えた。
私は最のの仕込み数を考えた。普段なら個。けれど国鉄最のを見に来るが増えるかもしれない。く作りすぎれば余る。なければ、いつもの客が買えない。
私は帳面に百といた。
「ずいぶん気だね」
良治が言った。
「最くらい、し冒険してみたいの」
そして、その数字の横にさく丸をつ描いた。
《個、取り置き》
誰のためかは、まだ誰にも言わなかった。