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"昭和62年、国鉄最後の日に駅弁を一つ売らなかった理由" 第12話

の乗換

、駅の構内営業を担当する井沢さんが、初めてを見に来た。

まだしい会社の仕事が始まったわけではないが、からの売を準備するため、関係者と話をしているという。歳くらいの、きちんとした言葉を使うだった。

「これまでの営業実績は拝見しました。く続けてこられたことも承しています」

「だったら、売を残してもらえませんか」

私が言うと、井沢さんは帳をいた。

「今の所は通になります。共同売については、改装が済んだあとに、量からの委託販売を検討できます。ただ、ほかの品も扱いますので、条件は統したいんです」

「パーセントの数料ですね」

「現点の案では、そうなっています」

私は試験販売の記録をした。鶏めしとさい弁当の売れた、残った数、のの違い。井沢さんは枚ずつ見た。

「よく調べられましたね」

「売らせていただけるなら、売れ残りを減らしたいんです。数料だけでなく、売る数やを相談したい」

「それはできます。ただ、駅の売で百個売るような形には戻らないといます」

私は頷いた。以なら、その言葉を聞いただけで腹がっただろう。だが今は、百個を売るためのと費用を計算できる。

井沢さんは、売の完成がくても以になる見込みだと告げた。

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「のは、構内での販売はできません。事の全、通に台を置くことも難しいです」

私はそので、駅のの歩なら売っていいかと聞きかけ、やめた。歩にもが通る。駅の客を捕まえるために、別ののを塞ぐわけにはいかない。

帰り際、井沢さんが言った。

「私は駅の商売をなくしたいわけじゃありません。旅のが買える弁当は残ってほしい。ただ、しい会社も、売の採算を見なければならないんです」

井沢さんはしい売の図面を裏返した。そこには、待の子の配置まで描かれていた。

「座る所を増やしたいという声もあるんです。売のにが集まると、列を待つ方が落ち着かないこともあって」

私はののさな子を見た。駅で働いていると、座って待つのことを忘れがちになる。客に弁当を買ってほしい気持ちと、客に気持ちよく待ってほしい気持ちは、いつも同じ所に収まるとは限らない。

私はその言葉をすぐには好きになれなかった。でも嘘ともわなかった。

そのの午、包装資材ので田品の森美さんに会った。田品の配送をまとめている女性で、私より歳ほど若い。

「宮原さん、へしてるんですってね」

「お客さんを取っちゃった?」

「取ったり取られたりよ。あそこのたちはにうるさいから」

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森さんは笑った。

「い弁当は量に作れば何とかなる。でもない注文をくへ運ぶと、代がかかる。宮原さん、そこを計算してる?」

私は正直に首を振った。

「回の配達に何分かかるか、ちゃんといたほうがいいわよ。のいいが潰れるの、見たくないもの」

競争相に教わるとはわなかった。

「どうしてそんなことを教えてくれるの」

「この町で弁当を買うが減ったら、うちも困るから。それに、あなたの鶏めし、うちの母が好きなの」

森さんは箱を抱えて帰っていった。

私はそのろ姿を見ながら、商売には敵と方しかいないわけではないのだとった。

へ帰ると、良治が駅の古い板の写真を撮ってきていた。私たちの売と、改札の計が写っている。

「なくなるに枚くらい、とってな」

「私、のにいないじゃない」

「いつも忙しくて、写真を撮らせてくれないだろ」

私は笑った。

「じゃあ、に撮って。今度は私も入るから」

その約束をしたとき、終わりのが初めて、ただ怖いだけのではなくなった。

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