"50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿" 第10話
剥きしの憎悪と叫び
「……嘘でしょう……?」
私の唇から、掠れた声が漏れた。
全の毛穴が逆ち、の芯から爪先まで、ドス黒いマグマのようなが逆流していく。界が真っ赤に染まり、激しい悸で呼吸が苦しくなる。
なぜ?
どうして麻紀は良くて、私は駄目だったの?
どうして麻紀の机のには堂々と赤本が積まれ、私の赤本は段ボールの底に隠されなければならなかったの?
「女が学へってどうする」「も遊ぶなんかない」「親の敷いたレールに従え」——あの、私のから容赦なく浴びせられた罵声の嵐は、体何だったのか。
私がいくら泣いて頼んでも、奨学を借りて自分で返すと訴えても、机ののノートに目を落とすことすら拒絶した男が、なぜ今、老鏡をかけて妹の募集綱をい入るように読んでいるのか。
なぜ妹の参考代はんでし、私には万円の値札をつけて、見らぬのへと売りばしたのか。
最初から、私がいらない娘だったからなのか。
このにとって、私はただの厄介払いの対象で、麻紀だけがされるべき本物の子供だったとでも言うのか。
「お姉ちゃん……?」
物音に気づいた麻紀が顔をげ、庭の入りにち尽くす私を見つけて声を弾ませた。
「お姉ちゃん! 帰ってきたのね!」
麻紀が嬉しそうに丸子からちがり、駆け寄ろうとする。
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その声に反応して、縁側の父もゆっくりと顔をげ、元の項を机のに置いた。
の歳を経て、父の線と私の線が、空で真っ向から激突した。
父の目が驚きに見かれ、老鏡の奥の瞳が激しく揺れた。
「……千……」
勝のガラス戸がき、母のよし子もエプロンでを拭きながらびしてきた。
「千! 本当によく帰ってきてくれたねえ! さあ、がってお茶を——」
「寄らないで!」
私の裂帛の気が、静まり返った庭を切り裂いた。
母がビクッとを止め、駆け寄ろうとしていた麻紀が怯えてちすくむ。
産の袋が、私のから力なく面へ落ちた。のクッキーの箱が鈍い音をてて転がる。
私は縁側に座る父を歩、また歩と詰め寄るように睨みつけながら、喉の奥から絞りすようない声で言い放った。
「……何してるの、それ」
父は無言のまま、ゆっくりとちがった。老鏡をし、作業着のズボンのポケットへ突っ込む。
「……麻紀のの相談に乗っていたんだ」
「の相談……? 学へかせるの? 麻紀を、学へ?」
私の声は震え、急速にりのを帯びてねがった。
父は線を逸らすことなく、く、しかし確に答えた。
「ああ。けるなら、かせてやるつもりだ」
その瞬、私ので張り詰めていた理性の糸が、凄まじい音をててブチ切れた。
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「ふざけないでよッ!!」
私の号が、初の青空に突き刺さった。
「私には『女が学へってどうする』って鳴り散らしたじゃない! 『も使ってどうする』って、机を引っぱたいて私のノートを汚したじゃない! 私は先になりたかった! 今の麻紀と同じように、必で勉して、奨学を借りて自分で全部返すって頼んだのに、お父さんは私の話なんて度も聞いてくれなかったじゃない!!」
父は眉つかさず、ただ直したまま私の罵声を受け止めていた。
「私を万円の結納で追いして、の奥に売りばしたくせに! 毎朝に起きて、寒さに震えながら自転を漕いで、だらけになって畑を耕して……どれだけ惨めで、悔しくて、泣きながら勉したか、お父さんに分かる!? 佐々のたちがとして私を認めてくれたから、私は学をて先になれたのよ! お父さんが私にしてくれたことなんて、何つないじゃない!」
私の頬を、い涙がとめどなく流れ落ちた。麻紀が両でを覆い、青ざめた顔で私たちを見つめている。母は「千、やめなさい、もういいから……」と泣き叫んでいるが、私のには届かなかった。
「どうして麻紀は良くて、私はダメだったの!? 同じ娘でしょう!? 私が邪魔だったから!? 万円が喉からがるほど欲しかったから、私を贄にしたの!?」
私は父の胸元を指差し、全を震わせて最の刃を突きつけた。
「私が自分の力で先になったから、世体が悪くなって、自分の違いを認めるのが怖くて、麻紀を使って『いい父親』のやり直しをしてるだけでしょ! 私で失敗したから、麻紀で埋めわせをしてるだけでしょッ! 答えてよ! 何か言いなさいよ!!」
庭には、私の激しい呼吸の音と、母の啜り泣きだけが残された。
かつて絶対なとして君臨していた男は、さくなった肩を落とし、ただ黙って、面に散らばった私の涙の跡を見つめていた。