"50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿" 第8話
話の呼び声との空
の連休を控えた曜の昼がり、職員で翌週の授業案をまとめていた私の元に、自宅のふみ子さんから内線が回ってきた。
「千さん、実のお母さんから話だよ。なんだか、とても改まった様子でね……」
受話器を握り直すと、くから微かにノイズ混じりの母の声が聞こえてきた。
「もしもし……千かい? 急にお仕事にごめんね」
ぶりに直接聞く母の声は、私の記憶のにあるものよりもし掠れ、老いのを滲ませていた。
「お母さん……どうしたの、急に。何かあったの?」
私の警戒を察したのか、母は申し訳なさそうに言葉を濁しながら、恐る恐る本題を切りした。
「実はね……麻紀のことなのよ。あの子、今でになったでしょう。……のことで、どうしてもお姉ちゃんに相談に乗ってほしいって、毎泣いて頼むのよ」
「麻紀が……?」
私の脳裏に、あの、ランドセルを背負って「お姉ちゃん、くにっちゃうの?」と寂しそうに見げてきた歳の妹の顔が浮かんだ。あのさかった麻紀が、もう学受験を控える齢になっていたのか。
「あの子、お姉ちゃんが学をて学の先になったことを、本当に誇りにっていてね。希望の類をにして、どうしてもお姉ちゃんの見を聞きたいって……。千、連休にだけでいいから、実に顔をしてくれないかい?」
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私は受話器を握るに力を込めた。
妹に会いたい気持ちはもちろんあった。しかし、その背にある実の空気、そして何より父・正のをいすだけで、胃の奥がたく締め付けられるようだった。
「……お父さんは、私が帰ることをっているの?」
私のたい問いに、母は瞬言葉を詰まらせた。
「お父さんは……相変わらずよ。無だし、仕事ばかりで。でもね、千。あの子のためだとって、度だけ帰ってきてやってくれないかい」
「……し、考えさせて」
私はそう答えて、受話器を置いた。
その夜、夕の片付けを終えた居で、私は博に母からの話の内容を打ちけた。
「断ろうとうの。いまさら実に帰ったって、お父さんと顔をわせれば嫌ないをするだけだし……麻紀には悪いけれど、か話で相談に乗れば分だとう」
座布団のにあぐらをかいて聞を読んでいた博は、私の言葉を聞くと、ゆっくりと鏡をして線を向けてきた。
「千。……ってこいよ」
「え……?」
「お、この、度も実の敷居を跨いでねえだろ。もほとんどかねえで、親父さんのことをずっとの奥底にわだかまらせたままきてる」
博の静かな、しかし確信に満ちた言葉が私の胸を突いた。
「無し続けるってのはな、それだけ相のことを気に病んでる証拠だ。
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おはもう派に学をて、教壇にってる派な先だ。誰の脛も齧ってねえし、誰にもろ指を指される筋いはねえ。自分のでってる姿を、度その親父さんに真正面から見せてくればいい」
「……博さん、緒に来てくれない? あなたが隣にいてくれたら、私——」
私がすがるように頼むと、博は苦笑しながら、しかしきっぱりと首を横に振った。
「駄目だ。俺がったら、向こうの親父さんはおを『佐々の嫁』としてしか見られなくなる。おは佐々千であるに、藤崎千というの自したとして、自分の力で勝ち取ったを見せにきたいんだろ。夫を盾にしてどうする。でって、胸を張って帰ってこい」
博の言葉は、私の甘えを綺麗に削ぎ落としてくれた。
そうだ。私は誰かの庇護のもとで威張りたいのではない。歳のに踏みにじられた尊厳を、自分ので取り戻すために、あの男のにたなければならないのだ。
翌週の曜、私はの爽やかな初の陽がり注ぐ、で実へと向かう列に揺られていた。
窓のを流れる緑濃き並みを見つめながら、私は膝のの鞄をぎゅっと抱きしめた。
には、麻紀への産に買った菓子と、私の分を証する学の教員採用通、そして学の卒業証の写しが入っていた。
女が学へってどうする——、私のの奥で呪いのように響き続けていた父の言葉に、今こそ、私自のという決定な解答を叩きつけてやるのだ。