みかん小説
本棚

"父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密" 第20話

黄のので

〇、。 化粧をまとった々が青空に映える、静かなの夕暮れ。 宮田農園の古い母の台所からは、パチパチと薪ストーブの爆ぜるよい音と、炊きたてのご飯の甘いりが漂っていた。

「輔、美咲さん、ご飯が炊けたよ!」 さんの弾んだ声が居に響く。 に靴を脱ぎ揃え、を洗って居へがると、丸い座卓のには、湯気をてるご馳が並んでいた。 根と豚肉の煮物、菜の浅漬け、々の具沢噌汁。

そして、座卓のには――つの茶碗が並んでいた。 輔さんのぶりな茶碗、さんのぽってりとした茶碗、私の憐な柄の茶碗。 そして、その央、番尊い座の位置に―― 本の稲穂が刻まれた、き父・正のあの古い茶碗が、盛りのいご飯を誇らしげに湛えて置かれていた。 茶碗の向こうには、の父と義父・茂さんが並んで照れ笑いを浮かべる写真が、仲睦まじく飾られている。

「いただきます」 で声を揃えてをわせる。 ありがとうではなく、いただきます。 命を育み、命をいただくことへの謝の言葉。

柄の茶碗から運んだ米は、噛み締めるほどに芳醇な甘みが広がり、えた体を芯から温めてくれた。 「旨いなあ……」 輔さんが目を細めて呟く。 「今も、いい米ができた。

広告

美咲さんが台から守ってくれた、番田んぼの米だ」 「ふふっ、私の力じゃないわよ。集落のみんなと、お父さんたちが守ってくれたのよ」 さんが「本当にお父さんたちのおかげだねえ」と笑い、座卓に温かな団欒のが咲く。

私は箸を置き、縁側のガラス戸の向こうに広がる、面の原を見つめた。 の眠りについた広な田んぼ。 になれば、またあの清流からが引かれ、の温もりが蘇り、青々とした苗がに揺れるだろう。 そしてには、見渡す限りの黄のとなって、無数の々の命を支えていくのだ。

実を追いされ、のる空の、段ボール箱を抱えてち尽くしていたあの。 私はすべてを失ったとっていた。 だが、違っていた。 余計な見栄や虚飾をすべて剥ぎ取られた先に待っていたのは、にまみれても決して汚れることのない、真実のと絆だった。

ふと、棚のの父の茶碗に目をやると、ちるい湯気の向こうで、父がいつものように目を細め、満そうに微笑んでいるような気がした。 『美咲、今も旨いご飯だな』

「うん、お父さん。世界、美しいご飯だよ」

私は胸ので静かに答え、再び箸を取った。 のついた靴をし、とともにきるこの所こそが、私が命をかけて守り抜く、永の帰る所なのだから。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: