みかん小説
本棚

"父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密" 第17話

器棚の聞

に入ると、の澄んだが田んぼを吹き抜け、乾燥調製を終えて温貯蔵庫で寝かせていた米が、いよいよ荷の期を迎えた。 さんのの骨折も順調に回復し、松葉杖なしでゆっくりと歩けるようになっていた。

ある穏やかな曜の午、私は母の台所で器棚の理をしていた。 米の季節を迎え、用の器へと入れ替えるため、棚の奥の埃を拭き取っていた――私の指先が、最段の奥に押し込まれていた、ゴワゴワとした聞の包みに触れた。

「あ……」 息が止まった。 ヶ、真の凍える朝に実を追いされ、このへつで嫁いできたあの。 どうしてもくことができず、封印するようにして器棚の奥へ隠した、き父・正の形見の茶碗だった。

私は正座をし、震える指先で、何にも巻かれた黄ばんだ聞を枚ずつ解いていった。 破れたの隙から現れたのは、あの見慣れた、でし歪な陶器の肌。 側面には、細い釘の先で彫り込まれたような、本の素朴な『稲穂』の匠。

『美咲、今も旨いご飯だな』 目を細め、嬉しそうにご飯を頬張っていた父の笑顔が、鮮烈に脳裏に蘇った。 の介護活。仕事と病に追われ、の見えない暗ので、この茶碗からちる湯気だけが、私と父の命を繋ぐ唯の希望だった。

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『美咲、あの茶碗をくれたに……いつか礼を言っといてくれ。どこの誰かも分からんがな……』 父の最期の遺言が、の奥で霊した。 私は茶碗を両で包み込み、畳のに額を擦り付けて、声を押し殺して泣いた。 お父さん、私、ちゃんとやってるよ。 お父さんの好きなの匂いがする所で、温かい族に囲まれて、笑ってきているよ――。

「美咲さん、どうしたんだい? 何か割れ物でも……」 台所に入ってきたさんが、畳にうずくまる私を見て驚き、駆け寄ってきた。 私は涙を拭い、掌のの茶碗を差しした。 「お母さん、これ……くなった私の父が、ずっと使っていたお茶碗なんです。母をくしたの、父はずっとこのお茶碗でご飯をべていました。昔、国沿いの朝で米を売っていた親父さんにもらったんだって、いつも嬉しそうに話していて……」

その瞬だった。 さんの線が茶碗の表面に落ちた途端、その顔からスッと血の気が引き、瞳孔がきく見かれた。

「美咲さん……それ、ちょっと見せておくれ!」 さんは震えるで茶碗をひったくるように受け取ると、窓辺のにかざし、底の台(こうだい)を引っくり返して凝した。 そこには、台の脇の素に、極の釘で引っ掻いたような、独特の『本に枝分かれした稲穂』の刻印が刻まれていた。

さんの喉から、掠れた鳴のような声が漏れた。 「……しげるさんの、稲穂だ……!」

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