"父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密" 第10話
豹変した姉たち
「……雑誌、見たのね」 私の乾いた声に、ゆか姉さんは話で狂するようにまくしてた。
『見たどころの騒ぎじゃないわよ! あのボロに軽トラだったから、てっきり自己破産寸のド貧乏農だとばっかりってたのに! 商億ってことは、あんた毎のお遣い百万円くらいもらってるんでしょ!? タワマンとかとか買わないの!? あんた、とんでもない玉の輿に乗ったじゃないのよ!』
続いて受話器を奪い取ったマリ子姉さんが、甘ったるい声で追撃をかけてくる。 『ねえ美咲、今度の曜、久しぶりに姉妹で事でもどう? 旦さんも連れてきなさいよ! 駅の老舗割烹『料亭 橘』の個を予約したから! 族入らずで、お祝いしなきゃね! お父さんだって国でぶわよ!』
「お父さんだって国でぶ」――。 その言葉を聞いた瞬、私の胃の腑がギュッと縮みがり、氷を流し込まれたような寒気がった。
父が息を引き取って週も経たないうちに実へ押し寄せ、「このをく売りたい」「あんたにむ権利はない」と罵倒したのは誰だったか。 遺産分割協議で私の取り分を零円にし、実印を押せと迫り、真の空のへつで放りしたのは誰だったか。 「貧乏農の嫁がお似いよ」と嘲笑い、実をるも見送りにすら来なかったが、夫が「商億の社」
広告
だとった途端、こののひら返しである。
(絶対に、裏がある……) 片桐弁護士の助言が脳裏をよぎった。 『お姉様方が態度を変えて接触してきたら、絶対にそのでや類にサインをしてはいけませんよ』
「……輔さんは、週末は全国の契約農さんを回る張が入っているからけないわ。私なら、くけれど」 『あら、旦さんは来られないの? 残ねえ……。まあいいわ! じゃあの曜、正午に『橘』で待ってるからね! 遅れないでよ!』
話が方に切れ、ツーツーという無質な子音が残された。 私は縁側に座り込み、夕暮れの田んぼを見つめた。 カエルの唱が響く、との匂いがに乗って運ばれてくる。 輔さんは「美咲さん、本当にくのかい? 嫌なら断っていいんだよ」と配してくれたが、私は静かに首を横に振った。
「ううん、くよ。輔さんのおを目当てにしてすり寄ってくる姉たちに、私はもう度と怯まない。自分ののケジメは、私自のでつけなきゃいけないから」
そして迎えた、の曜。 真のい差しが照りつける正午、私は駅の老舗割烹『橘』の簾をくぐった。 仲居に案内されて通されたのは、入れのき届いた庭を臨む、贅沢な畳の座敷個だった。 座に陣取っていたマリ子姉さんとゆか姉さんは、実でのな装が嘘のように、派なブランド物のワンピースにを包み、宝をジャラジャラとらせていた。
「美咲! 待ってたわよ〜!」 はちがり、まるで統領夫でも迎えるかのような袈裟な歓声をげた。 だが、その瞳の奥には、ギラギラとした欲と打算の炎が、隠しようもなく燃え盛っていたのだ――。