みかん小説
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"朝八時までのヒーロー弁当" 第13話

のの部

堀に呼ばれた浦は、検査から正へ急いだ。夜通し現を歩き回ったため、鏡の奥の目は赤く、作業の袖には油がついていた。守のでち止まると、台に積まれた包みと、そのろにつ正夫が見えた。浦は瞬、何が起きているのか理解できなかった。あの朝、自分が取引を打ち切ったの主が、今は分の朝飯を運んできている。

「これは、どなたが注文したものですか」。浦が尋ねると、堀が名の並んだを差しした。「現の社員が、それぞれ個で頼みました。代は集めてあります。には夜に連絡が入り、作れるか確認してもらいました」。浦はを受け取った。そこには堀の班だけでなく、検査員や保全担当者の名もある。誰も会社に黙って無理に持ち込もうとしているわけではなかった。

浦は正夫に向き直った。「いつ作られたものですか」。正夫はく答えた。「から米を炊いた。ましてから握った。半に渡した。すぐうなら丈夫なようにしてある」。しず子が用した調理刻のメモと、保容器のも見せた。浦はつずつ確認した。品を扱う責任があるからこそ、だけでをけるわけにはいかない。だが、確認することは相をごなしに否定することではない。

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自分はあの朝、質問をつもせずに危険だと決めつけた。いま正夫が答えている内容は、当だって尋ねれば分かったはずのことだった。

「の営業許はありますか」。浦がねると、正夫は「に掲げてある。必なら写しを持ってくる」と答えた。しず子がに添えてした資料のことを、浦はそので初めていした。あのとき確認する会はあったのに、自分は必ないと決めつけていた。浦は守に「総務へ確認を取ります」と告げ、話を借りた。総務担当者は、以提された資料の控えが会社にあることを伝えた。

話を終えた浦は、もう度台を見た。の包みは然と並び、保容器の蓋には調理刻が記されている。会社が事を配できなかったからといって、老夫婦の好にすべてを押しつけてよいわけではない。それでも、いま目のにある事を必としている社員がいる。浦は守に向き直った。「本たちの注文分として、休憩までの搬入を認めます。受け取りはすぐ配ってください」。

翔太たちは「ありがとうございます」とをげ、台を押してのへ入った。堀が先導し、休憩へ向かう。正夫はそのろ姿を見送ったが、自分はのに残った。浦もそのをれず、しばらく向かいのを見つめていた。

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シャッターは半分がり、台所にはかりがついている。夜のには真っ暗だった所だ。

「どうして、ここまでしてくださったんですか」。浦は正夫に尋ねた。「私どもは、もうお願いするではありません」。正夫は答えを探すようにのかりを見た。「誰かに頼まれたから作ったんじゃない。かりが消えないから、腹をすかせてるがいるとった。それで数を聞いた」。浦は何も言えなかった。正夫は続けた。「と聞いたから分作った。それだけだ」。

そのとき正夫は、台の端に置いてあったさな包みを取りげた。卵焼きと煮物がしずつ入った、いつものおまけだった。「これはあんたに」。浦は驚いてを引いた。「いえ、私は……」。正夫は「いちばん疲れた顔をしてる」とだけ言った。浦は包みと正夫の顔を見比べ、ようやく両で受け取った。

の内側から、誰かの声が聞こえた。「この卵焼きだよ」。別の誰かが笑った。張りつめていたの朝に、久しぶりにの声が戻った。浦は包みをき、卵焼きを切れに入れた。めているのに、だしのりが残っていた。浦は目を伏せ、み込むまで何も言わなかった。

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