みかん小説
本棚

"朝八時までのヒーロー弁当" 第12話

という数字

翔太からの話を受けた堀は、休憩で交代の社員たちに声をかけた。「朝まで残るで、おにぎりが欲しいはいるか」。突然の問いに皆が顔をげた。堀は「向かいのが、作れるかもしれないと言っている。ただし数を確かめてからだ」と説した。無理に頼むつもりはないし、代も自分たちで払う。そう伝えると、次々にががった。

堀は班ごとに数を数え、すでに帰宅したや事を必としないを除いた。注文は分になった。正夫の膝をる堀は、瞬ためらったが、から先に声をかけてきたと聞いてしした。翔太へ数を伝え、「運ぶも必だ。おの同期で来られるがいるか」と頼んだ。翔太はすぐにへ話し、とも「く」と返事をした。

午、の話が鳴った。「です。おにぎりつずつなら、みんなびます」。翔太の声はすっかり目が覚めていた。正夫はしず子と目をわせた。百個のおにぎりに卵焼き。米の庫はりる。きな炊飯器を台使えばにうが、炊いたご飯をますも必だ。「半に取りに来い。運ぶのはおたちだ」。正夫が言うと、翔太は何度も礼を言った。

しず子はを洗い、作業台を拭き、炊飯器の準備を始めた。正夫は材料の数を確かめ、注文の数をきくにいた。

広告

以なら頼まれた数よりく作っていただろうが、今夜は分だけ。急な注文だからこそ、余分なものを作ってが疲れるわけにはいかない。しず子は「卵は私が焼く。あんたは座ってご飯を頼むよ」と役割を決めた。

ご飯が炊きがると、正夫は清潔な浅い容器に分けし、湯気がこもらないようにました。温かいまま包めば滴がつき、も状態も悪くなる。は調理した刻をメモし、べる刻までく置かないよう翔太にも伝えることにした。正夫は丸子に座り、袋を替えながらおにぎりを握った。しず子は卵焼きを切り揃え、包みに分ずつ添えた。

「昔はもっと作れたのにね」。しず子が卵を割りながら言うと、正夫は「昔は膝も丈夫だった」と答えた。はさく笑った。無理をしているのではないかと互いに気にかけながらも、は止めなかった。台所の窓から見えるのかりは、まだ消えていない。正夫は作業の音を聞き、今夜は本当に引いているのだと確かめた。

百個を数え終えたころ、しず子は最の包みをに取った。「個、卵焼き付き。分」。正夫は頷いたが、台の端に残った卵焼きの切れ端と煮物を見て、もうつさな包みを作った。しず子が「あんた、約束は」と言うと、正夫は「おまけはつだけだ」

広告

と答えた。いつもいちばん疲れた顔の客へ渡してきた、さなおかずの包みだった。

半、勝を叩く音がした。翔太と同期のが作業着のに着を羽織り、息を切らしてっている。は注文数と包みの数を確かめ、きな清潔な保容器に入れて台へ積んだ。しず子は「着いたらすぐ配って、べてもらってね」とを押した。翔太は「分かりました」と答え、容器の蓋をしっかり閉めた。

正夫もエプロンのままへた。台にはを触れず、の横をゆっくり歩く。まだ暗いを渡ると、正の守がをげて止めた。「休のこの、の品をへ入れるには責任者の確認が必です」。翔太は注文表を見せたが、守は困った顔で首を振った。正夫は「決まりなら待つ」と答えた。堀がの内側からってきて、事を聞くとの建物へ引き返した。

正夫は台の横にち、空を見げた。の端がわずかにくなっている。分の朝飯は、もう目のにある。それでもの内側へ入るには、あの朝「もうりません」と言った男の返事が必だった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: