"忘れたコートが教えてくれたこと" 第13話
〇万円のき先
に帰った私は、く触れていなかったアプリをいた。
博の族が本当に困ったのために、
自分だけで貯めていた〇万円。
あの頃は、この座を見るたびにししていた。
もし何かあっても、
私は博を助けられる。
族になるを支えられる。
そうっていたからだ。
彼らは、そのことをらなかった。
私は度も話していない。
今えば、それでよかった。
もしをられていれば、
あの〇万円も「族のため」に使う提で計算されていたかもしれない。
私は残を確認した。
そして全額を、自分の将来のために使っている予備資座へ移した。
画面で数字が移する。
たったそれだけの操作なのに、
何かが完全に終わった気がした。
笠原のために準備していたものは、
もう何も残っていない。
数、実の母へ話した。
「お母さん、来どこかかない?」
「どこかって?」
「温泉」
母は笑った。
「急ねえ」
「たまにはでゆっくりしたいなとって」
「お、丈夫なの?」
「私がす」
し沈黙があった。
母は私を配していたのだとう。
「結婚のこと、無理に忘れようとしてない?」
「してないよ」
私は笑った。
「今、自分のおを、自分が使いたいことに使おうとってるだけ」
その言葉をにして、
自分でも驚くほど気持ちがよかった。
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数週。
私たちは県の温泉へった。
級旅館ではない。
さな呂があり、元の料理が美しい、ごく普通の宿だった。
湯につかりながら、母が言った。
「こんなにゆっくりしたの、久しぶり」
「私も」
結婚の話はほとんどしなかった。
仕事。
母の所の。
最見たドラマ。
翌朝の朝が何からか。
そんな話ばかりだった。
夕の席で、母がふと私を見た。
「ゆい」
「何?」
「よかったね」
「何が?」
「ちゃんと帰ってきて」
私は箸を止めた。
母はそれ以説しなかった。
でも、は分かった。
私は結婚できなかったのではない。
自分のへ帰ってきたのだ。
もし博と結婚し、
笠原のや会社を守るために、
自分のおとを使い続けていたら。
今、母とこんなふうに旅する余裕があっただろうか。
私は〇万円を誰にも奪われなかった。
マンションも失わなかった。
それ以に、
何のために使うかを自分で決める権利を守った。
温泉から帰った夜。
私は部の気をつけ、
自分の鍵で自分の玄関をけた。
誰にも相談せず、
誰にも許を取らず、
私はここで暮らしている。
当たりのことなのに、
その当たりが、
以よりずっと切にえた。