"忘れたコートが教えてくれたこと" 第12話
を売った
会社の再建が始まってから、さらに数かが過ぎた。
古い倉庫は買いが決まり、売却された。
父親が会社を始めた頃に建てたという建物は、役目を終えた。
郊のも部が放され、その代は借入の返済と運転資へ回された。
会社は以よりさくなったが、
営業を続けている。
全員をそのまま残すことはできなかったものの、倒産して全員が職を失うような事態にはならなかった。
しばらくして、共通のから別の話を聞いた。
幸子さんは、実のきなまで売ることになったらしい。
会社の借入理。
固定資産税。
老朽化したの維持費。
夫がくなったあとでみ続けるには、もともと負担がきかったのだという。
あれほど、
《お父さんとのいがある》
と言っていただった。
引っ越しの。
荷物が運びされた空っぽの部で、幸子さんは声をげて泣いたそうだ。
私はその話を聞いても、連絡しなかった。
「丈夫ですか」
とも言わなかった。
私がたいになったからではない。
その涙は、私が引き受けるべきものではなかったからだ。
博も、実から銭な援助を受けられる活ではなくなった。
彼自は以から勤めていた会社に残ったものの、今度は自分の料から母親の活費をし負担するようになったと聞いた。
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毎いくらか。
無理のない範囲。
それでも、以のように好きなへをかけたり、頻繁に旅へったりする余裕はなくなったらしい。
私はその話を聞きながら、
《制裁》
という言葉は違うとった。
誰も彼を罰してはいない。
ただ、
自分の族の費用を、
自分たちで払うことになっただけだ。
以はそれを、私のマンションへ移そうとしていた。
その逃げがなくなり、
本来の位置へ戻った。
それだけなのだ。
私の活も、しずつ元へ戻っていた。
賃収入は、以と変わらず座へ入ってくる。
マンションには抵当権も設定されていない。
祖母が残してくれた資産は、今も私のものだった。
ある昼休み。
で通帳を記帳し、並んだ数字を眺めながら、私はく息を吐いた。
もし、あのコートを忘れなかったら。
もし、あと週何もらないまま結婚していたら。
今頃、私はこのマンションをめぐって博たちと話しっていたかもしれない。
《族なんだから》
《の活が》
《もう結婚したんだから》
そんな言葉に囲まれ、
嫌だと言うたびに、
たい嫁だと言われていたかもしれない。
何も起きなかったのではない。
私は、その未来に入るに止まったのだ。
をる。
の空気が頬に触れた。
私は通帳をバッグへしまい、
自分の会社へ戻った。
その取りは、
よりずっと軽かった。