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"忘れたコートが教えてくれたこと" 第10話

祝ってくれるはずだったたち

婚約を解消しても、現実はすぐには終わらなかった。

結婚式の招待状はすでに発送している。

親族。

友。

職の司。

数へ、式がなくなったことを伝えなければならなかった。

翌朝、私はダイニングテーブルに招待客の覧を広げた。

まず叔母へ話した。

「もしもし。ゆいです」

「ゆいちゃん。どうしたの? 式の準備で何か必?」

るい声に、胸が痛んだ。

「実は、結婚式を止することになったの」

話の向こうが静かになった。

「……もう週でしょう?」

「うん」

「博さんと何かあったの?」

「結婚できない理由が分かったの」

詳しいことは話さなかった。

マンション。

担保。

婚姻の説。

それらを伝えれば、叔母は違いなくる。

親族のには、直接笠原へ文句を言うもいるかもしれない。

私はそれを望んでいなかった。

自分の判断を正当化するために、

相のの事を言いふらす必はない。

「招待状まで送っておいて、本当にごめんなさい」

「そんなこと謝らなくていい」

叔母は言った。

「ゆいちゃんが決めたなら、それでいい。でも丈夫なの?」

「丈夫」

本当は、完全に丈夫ではなかった。

それでも私はそう答えた。

友たちにも連絡した。

親しいには話し、それ以には丁寧なメッセージを送った。

《落ち着いたらご飯こう》

《無理に説しなくていいよ》

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《何か必なら言って》

その言葉に何度も救われた。

職では、直属の司へだけ事を簡単に伝えた。

「申請していた結婚休暇も取り消します」

司は驚いた顔をしたが、

「仕事より体調を優先していいからな」

とだけ言って、それ以は聞かなかった。

全員への連絡が終わった夜。

私はでソファーに座った。

やるべきことがなくなった瞬、

それまで押さえていたが気に押し寄せてきた。

スマートフォンをく。

写真フォルダーには、の博との写真が残っていた。

初めてでった。

誕のレストラン。

所の公園。

何でもない休にべたラーメン。

全部、嘘だったわけではない。

そこが番つらかった。

博が私に笑いかけた瞬まで全部が演技だったとはわない。

たぶん彼は私を好きだった。

でも、

自分の族の都と私のが衝突した、

彼は私のを回しにした。

その選択が、私たちのを壊した。

写真を見ているうちに、涙が落ちた。

滴。

滴。

やがて止められなくなった。

私は声を殺すこともできず、い泣いた。

結婚式がなくなったからではない。

「婚約破棄された女」と見られるのが怖いからでもない。

信じていたを、

もう信じることができない。

その事実がしかった。

どれくらい泣いたのか分からない。

夜がくなり、をるの音も減った頃、私はようやく顔をげた。

そしてスマートフォンのにある博との写真を選択した。

削除。

すべて削除しますか。

確認画面がる。

私はしだけ止まった。

過そのものを消せるわけではない。

それでも、

未来へ持っていく必はなかった。

私は「削除」を押した。

翌朝。

鏡のの私は、ひどい顔をしていた。

でも、昨夜までよりしだけ軽かった。

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