"忘れたコートが教えてくれたこと" 第8話
「嫌だ」が答えにならない
博は、自分が何を言ったのか分かっていないようだった。
《最まで俺を見捨てるとはわなかった》
それはつまり、
私が最には折れることを提にしていたということだ。
藤さんが静かに尋ねた。
「笠原さん。なぜ、さんの『嫌だ』という答えが成しないのでしょう」
博が顔をげた。
「え?」
「マンションはさん個の所物です。担保にすかどうかは、最終に所者である彼女が決めることです」
博はを閉じた。
「彼女が嫌だと言えば、その話はそこで終わる。それだけのことです。なぜ、説得を続けることが提なのですか」
博は何も答えられなかった。
私はそこで初めて理解した。
彼にとって、私の「嫌」は途経過だったのだ。
最初は抵抗する。
るかもしれない。
になるかもしれない。
でも結婚して族になれば、最には従う。
だから事に聞く必がない。
むしろ先に聞けば、結婚そのものを止められる危険がある。
「そこだよ」
私は言った。
博が私を見る。
「あなたが結婚に言えなかった理由」
「ゆい……」
「あなたは私に『助けて』って頼みたかったんじゃない」
私はゆっくり言葉を選んだ。
「私が断れる期を、自分で決めたかったの」
博の顔から血の気が引いた。
「違う」
「式のに言えば、私は結婚そのものをやめられる。
広告
でも結婚して、周りにも祝われて、簡単には戻れない状態になってから言えば、私は断りにくくなる」
「そんなつもりじゃなかった」
「じゃあ、どうして《婚姻週》っていてあったの?」
「それは母さんが……」
「あなたもってたでしょう」
言葉が止まった。
「結婚は、相が逃げにくくなるまで報を隠してから同を取るものじゃない」
私は初めてしだけ声をめた。
「自分の財産をどうするかも、自分のをどうするかも、全部私が決めることなの」
博の目から涙が落ちた。
「ごめん」
私は黙っていた。
「本当に、ごめん。俺、そんなつもりじゃ……」
「謝罪は受け取る」
彼が顔をげた。
「騙そうとしたことへの謝罪としては受け取る。でも結婚はしない」
博の肩が落ちた。
「だぞ」
「うん」
「緒にいたんだぞ」
「ってる」
そのを、私も簡単に捨てられたわけではない。
旅へった。
誕を祝った。
邪をひいたには、彼が薬を買ってきてくれたこともある。
仕事で失敗して落ち込んだ夜、何も話に付きってくれたこともあった。
だからこそ、つらかった。
最初から全部が嘘なら、もっと簡単だった。
でも彼はたぶん、私をしていた。
しながら、
自分の族を守るためなら、
私の拒否権をさくしても構わないとっていた。
そのつが同にしていた。
私は、そこを受け入れることができなかった。
「緒にいたからこそ、これ以続けないの」
私は言った。
「このまま結婚したら、私はこれから何かきなことがあるたびに考えるとう。あなたはまた、私に言わないほうが都がいいって判断するんじゃないかって」
博は顔を覆った。
藤さんはしを置いてから、事務な確認へんだ。
結婚式のキャンセル費用。
互いに預けている品物。
今の連絡方法。
そして婚約解消について、双方に異議がないこと。
の話は終わった。
残ったのは、
のをもう度別々に戻す作業だった。