"忘れたコートが教えてくれたこと" 第6話
「もう使わないから」
幸子さんとは、駅の喫茶で会うことにした。
笠原へくつもりはなかった。もう度あののへ入れば、「ここまで来たのだから」と相の空気にまれる気がしたからだ。
約束の曜、私は仕事をしく切りげた。
の奥の席で待っていると、幸子さんは約分遅れて現れた。
いつもの華やかなではない。
なグレーのカーディガン。
化粧もい。
私のに座ると、注文もせず、だけでいいと言った。
「ゆいさん」
幸子さんはくをげた。
「あの夜のこと、本当にごめんなさい」
私は答えなかった。
「怖いいをさせてしまったとってるの。でもね、もうマンションの話はしないわ。絶対にしないって、博とも話したの」
私はコーヒーカップにを添えたまま、黙って聞いた。
「倉庫も売る方向で考える。郊のも……博が、仕方ないって言ってくれたの」
本来、最初にやるべきことだった。
自分たちの資産を理する。
事業規模を見直す。
それを今さら、私のために譲歩したような顔で話している。
「そうですか」
私がく答えると、幸子さんは表をるくした。
「ええ。だからもう丈夫なの。配しなくていいのよ」
そして、を乗りした。
「だから、結婚式だけは予定通りにしましょう」
私は、そこでようやく彼女の目を理解した。
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マンションを使うことをやめれば、問題は消える。
そうっているのだ。
「招待状もしてるでしょう? 親戚も会社のもみんな楽しみにしてるの。ここで止になったら、博だって会社でが悪くなるし……」
「無理です」
幸子さんの笑顔が止まった。
「え?」
「結婚はしません」
「どうしてよ」
声の温度が変わった。
「もうマンションにはをつけないって言ってるじゃない。倉庫も売るのよ。だって考えてる。これ以、私たちにどうしろっていうの?」
「マンションの問題じゃないんです」
「じゃあ何なの?」
私は彼女をまっすぐ見た。
「私が見つけたから、やめるんですよね」
幸子さんのが閉じた。
「もし私がコートを忘れなかったら。へ戻らなかったら。あの類を見なかったら」
私はつずつ確認した。
「あなたたちは、予定通り私に何も言わず結婚して、それから担保の話をしたんですよね」
「それは……」
「見つからなかったら、続けたんですよね」
幸子さんは目を泳がせた。
「会社が本当に変だったのよ」
「それが答えです」
私は遮った。
「私は偶然見つけたから助かっただけです。あなたたちが私のを尊してやめたわけじゃない」
幸子さんの顔が赤くなった。
「でも族になるんだから、しくらい甘えたっていいでしょう!」
「族なら、嘘をついていいんですか?」
彼女は黙った。
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「族なら、相が嫌だって言う権利をなくしていいんですか?」
「私はそんなつもり……」
「以、族は困ったに助けうものだって言いましたよね」
「言ったわよ」
「あなたたちが求めていたのは助けいじゃありません」
私は静かに言った。
「自分の倉庫ももも残したい。博さんは自分の代で会社をさくしたくない。そのために、番断りにくそうな私へ負担を移そうとした」
幸子さんの目から涙が落ちた。
「違うの。そんなたい言い方しないで」
しかし、その涙を見ても、もうはかなかった。
泣けば、私が折れる。
今まで彼女が私を「言いやすい」と考えていたのなら、最までその方法を使うのだろう。
私はバッグから千円札をした。
「私のコーヒー代です」
「待って、ゆいさん」
ちがる。
「お願い。もう度だけ考えて」
「もう度と、結婚について連絡しないでください」
私はをた。
の空気はたかった。
それでも、あの夜よりずっと呼吸がしやすかった。
帰りのでスマートフォンを見ると、博からいメッセージが届いていた。
《度だけでいい》
《最に、俺とちゃんと話してほしい》
私はしばらく画面を見た。
そして決めた。
会う。
ただし今度は、
きりでは会わない。