"結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算" 第5話
私の職が敵になった
会員制のをた私は、さんが配したで勤務先の会計事務所へ向かった。
の資を追うには、使い慣れた分析環境が必だった。何より、翔太から脅された直に仕事へ戻ることで、自分自へ「私は引かない」と確認したかった。
ところが階の事務所へ着いた瞬、空気がおかしいと分かった。
普段なら話やキーボードの音が絶えない帯なのに、フロアが自然に静かだった。
同僚たちは私と目をわせない。
受付の女性は気まずそうにをげ、役員会議を指した。
には代表社員の林と事責任者がいた。
「座ってくれ」
「ったままで結構です」
林は度咳払いした。
「君の私活について、複数の取引先から懸の連絡が来ている」
「からですか」
「特定の名はせない。ただ、グループは当事務所が関与する規模案件をいくつも持っている」
庭内暴力とは言わなかった。
恵子さんが救急搬送されたことにも触れない。
ただ「私活」「信用」「取引先への響」という言葉だけが並んだ。
事責任者が類を私のへ置いた。
正典への主張を撤回する。
私自が結婚式の疲労から混乱し、状況を誤認したと説する。
部へは今発言しない。
従えば、かの休職を認める。
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拒否するなら、な職務の問題として処分を検討する。
「つまり」
私は類から顔をげた。
「嘘をつけば料を払う。嘘をつかなければ辞めろということですね」
「そんな言い方はしていない」
「内容は同じです」
この事務所で働いた。
週に何も帳簿と向きい、誰も見つけられなかった正資を追った。
私が直接担当した案件のには、事務所へ億円単位の売をもたらしたものもある。
それでも、企業倫理が本当に試されるが来た、彼らは利益のきい取引先を選んだ。
私は首から職員証をした。
「には、法を経由した巨額の資移、偽装取引、医療関係者への自然な支払いがあります」
林の顔が変わった。
「なくとも私は、な正の疑いを示す資料を確認しています。それでもを守ると決めたんですね」
「佐藤、決めつけるな」
「今決めたのは、そちらです」
職員証を机の央へ置いた。
「退職します」
事責任者がちがった。
「になるな。ここで辞めても――」
「私は今、で番静です」
私は会議をた。
自分の席へ戻ることもしなかった。
駐へ向かう途で、へ話をかけた。
以、私が直接担当した企業の経営者たちだった。
医療関連企業。
国際物流会社。
報技術分野の企業。
全員、過に敵対買収や規模な税務調査、正資問題で私が直接支えた相だった。
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「事務所を辞めることになりました」
事実だけを伝えた。
「独して、正調査と財務調査を専に続けます」
助けてほしいとは言わなかった。
返事はかった。
「佐藤さんが担当するなら、うちはそちらへ移る」
「会社へ依頼していたんじゃない。あなたに依頼していた」
「設したら連絡をください」
もしないうちに、元の事務所へ顧客から契約見直しの連絡が入り始めた。
正典は私から仕事を奪えば、らせられるとったのだろう。
実際には、会社のしがらみから私を解放しただけだった。
夕方、さんから話が入った。
「直美さん。向こうが次のを打った」
「何を?」
「正典さんが、恵子さんについて見始の申てをした」
私はを止めた。
「妻は判断能力を失っていて、自分が保護する必があると主張している。さらに、精神に定な嫁が全な所から連れった、という説まで添えている」
正典は暴力で妻を黙らせるのに失敗した。
だから今度は、制度を利用して恵子さん自のを奪おうとしていた。
「それが認められたら……」
「財産管理にも響する。だから急ぐ必がある」
さんの声が変わった。
「ただ、こちらにも準備はある」
「何ですか」
「正典さんが番られたくないものがた」
「……?」
「恵子さんを診てもらった。と関係のない複数の専医に」
い沈黙。
そしてさんが言った。
「なくとも今回の評価では、正典さんが主張するような認症を裏付ける結果はていない」
私は息を止めた。
「それだけじゃない」
さんは続けた。
「血液から、必性を慎に検討すべきい薬の成分が複数確認された」
恵子さんは判断能力を失っていたのではない。
判断しづらい状態へ置かれていた能性がある。
そういうことだった。
しかも、それを裏付ける資料は――。
すでに医師の正式な見としてまとめられ始めていた。