"3年眠った財閥社長を叩き起こした3歳の道士" 第14話
峨眉のと魂の呼び声
を貫き、険しい断崖絶壁が連なる霊峰・峨眉。
俗世の喧騒から遥かに隔絶されたその頂くに、鬱蒼とした杉林に抱かれるようにして佇む古い観(どうかん)——「清虚観」があった。
ヘリコプターを麓の平にりたせ、険しい段を駆けがった晏蕭と兮兮、そして最鋭のポータブル命維持装置を担いだ最医療チームは、息を切らして観のをくぐった。
庭には、い髭を胸元まで伸ばした老士が、静かに箒を掃いていた。
「師匠!」
兮兮が駆け寄り、老士の腰にしがみついた。
「おお、兮兮か。よく戻ったな。……派に徳を積んできたようじゃな」
老士——玄真子(げんしんし)は慈に満ちた笑みを浮かべ、背につ晏蕭を静かに見つめた。
「陸の若君。ぶりじゃな。そなたの額の相は、見事に消え失せておる。……娘の魂の平打ちが、効いたようじゃ」
「玄真……惜はどこにいますか!」
晏蕭の声が、切迫に震えていた。
老士は無言で頷き、奥の静寂なれへとを案内した。
おの煙が静かにち込める暗い部の央に、簡素な製ベッドが置かれていた。
そこに横たわっていたのは——
沈惜だった。
の歳が流れても、その美しさはしも損なわれていなかった。のようにい肌、くったまつ毛。
広告
しかし、その顔は気を失い、呼吸は今にも途切れそうなほど浅く、指先は氷のようにたかった。
「惜……!」
晏蕭が膝から崩れ落ち、そのたいを両で包み込んだ。
「すまなかった……俺が守れなかったばかりに、こんな奥できりで……!」
涙が次々と惜のに零れ落ちる。
老士が静かにをいた。
「惜の肉体は、わしが薬と気功で持たせた。しかし、魂を繋ぎ止めていた灯が、いよいよ尽きかけておる。……現代の医学でも、わしの仙術でも、もはや呼び戻すことは叶わん」
「そんな……嘘だろ!?」晏蕭が絶叫した。
「パパ、どいて!」
兮兮が涙を拭い、ベッドのすりにび乗った。
「兮兮が呼ぶ! 兮兮がママを連れ戻すもん!」
さなで、懐からあの龍の玉佩を取りし、惜の胸元に置いた。そして、で買ったの薬研と、切に抱えてきたリスの「じいじ」を枕元に座らせた。
「ママ、起きて! 兮兮だよ! をりて、パパを起こして、悪いをやっつけて、いっぱい徳を積んできたよ!」
兮兮はさな両で惜の頬を挟み込み、全全霊の気を込めて叫んだ。
「起きてよ、ママ! パパもここにいるよ! でおに帰るんでしょ!? く起きないと、兮兮またパパの悪いっぱい言っちゃうよ!」
歳の女の、魂を削るような叫び。
その声に呼応するように、惜の胸元の玉佩が、眩いばかりの温かい緑のを放ち始めた。
キィッ、とリスのじいじが鳴き声をげ、部に爽やかなのが吹き抜けた。
そして——
ピクッ、と惜の細い指先が、微かにいた。