"3年眠った財閥社長を叩き起こした3歳の道士" 第10話
ボロボロのリスと母の匂い
当たりを撃退したは、の最奥に広がるペット・観賞魚エリアを通り抜けていた。
とりどりの帯魚の槽や、らしい子犬や子猫が並ぶ華やかな角からしれた、の湿った吹き溜まりのような所に、軒の板も掲げていない怪しげながあった。
異臭が漂うそのの軒先に置かれた錆びだらけの鉄カゴので、兮兮のが突然、凍りついたように止まった。
「……あ」
カゴのには、さな赤毛のリスが横たわっていた。
毛並みは無残に剥げ落ち、全がと乾いた血にまみれている。呼吸は浅くく、網の底で激しく痙攣していた。
「じいじ……?」
兮兮が駆け寄り、両を網に張り付かせた。きな瞳から、見るに粒の涙が溢れす。
「じいじ! どうしてこんなところにいるの!? からりてきちゃったの!?」
暗い内から、脂ぎった顔の女が煙の煙を吐きしながらてきた。
「触るんじゃないよ、貧乏くさいガキだね。そいつはもう虫の息だ。あとも持ちゃしないよ」
「おばさん、この子に何をしたの!? 変なお薬をませたでしょ! 臓が苦しそうにバクバク言ってるもん!」
女主の顔から、瞬にして余裕が消えた。
「な、何言ってんだい! 野のリスを仕入れてやっただけだよ! 文句があるなら千元で買い取りな!」
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「野物の法捕獲、および劇薬物を用いた物虐待だな」
背から気のような声が響いた。
晏蕭がマスクをし、鋭いで女主を見ろしていた。そのにはすでにスマートフォンが握られ、画面には警察と森林管理局の通報履歴が表示されていた。
「陸グループの法務部が、この域の違法物売買ルートを徹底に洗う。貴様、度とシャバの空気を吸えるとうなよ」
「ひっ……! あ、あんた、陸の……!?」
女が鳴をげて逃げ込もうとしたが、駆けつけた私警備員たちによって即座に取り押さえられた。
晏蕭は自らの級ジャケットを脱ぐと、網のから瀕のリスを優しく包み込み、泣きじゃくる兮兮を抱きげてへと急いだ。
「内で最も腕のいい物病院へ急げ! 最の術チームを招集しろ!」
病院へ搬送されたリスは、直ちに集治療へ運び込まれた。獣医師からは「内臓血と薬物毒で、助かる確率は極めてい」と告げられたが、晏蕭は「費用はいくらでもす。最鋭の器をすべて投入しろ」とした。
ガラス張りの保育器ので、兮兮はずっとさなをガラスに当て、必に祈り続けていた。
「じいじ、んじゃダメ……。ママが待ってるんだよ……起きてよ……」
数に及ぶ懸命な処置の末、リスの呼吸がようやく定し、さな胸が規則正しくし始めた。
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「……危険な状態は脱しました。信じられない命力です」
獣医師の言葉に、兮兮はそのにペタリと座り込み、堵の涙をボロボロとこぼした。
晏蕭は娘の隣にしゃがみ込み、ポケットからハンカチをしてその涙を拭った。
「兮兮。なぜこのリスを『じいじ』と呼ぶんだ?」
兮兮はしゃくりげながら、の胸元から、古い革紐に通されたつのペンダントを引きした。
から現れたのは、淡い緑のを湛えた、最級の羊脂玉(ひつじばくぎょく)で彫られた龍の形の玉佩(ぎょくはい)だった。
それを見た瞬、晏蕭の息が止まった。
それは——かつて陸の当主の証として祖父から受け継ぎ、事故に遭う、彼が涯で唯した女性、沈惜の首に自らので掛けたものだった。
「このリスね、峨眉でママが倒れた、ずっとママの枕元での実を運んで守ってくれたの。師匠が『この子は世で徳を積んだの仙獣だ』って言って、じいじって名をつけてくれたんだよ」
兮兮は玉佩をさな胸に抱きしめ、声を震わせた。
「ママね……ずっと眠ったままなの。陸の男坊と同じ。ににぶつかって、それからずっと目を覚まさないの……」
晏蕭の胸が、万力で握り潰されたかのような激痛に襲われた。
惜もまた、自分と同じ期に、同じようにに撥ねられ、植物状態のままので眠り続けている。
誰の仕業かなど、考えるまでもなかった。
柳飄飄。そして、彼女を操って陸グループの富を奪おうとした、陸内部の裏切り者たちだ。
惜は命懸けで娘をの観へ逃がし、自らはい眠りのに沈んだ。そしてこのさな娘は、母を救うための「功徳」を集めるため、たったでをりてきたのだ。
「……すまなかった」
晏蕭の瞳から、粒の涙が零れ落ち、娘のさな肩を濡らした。
徹無比で誰のでも涙を見せたことのなかった男が、まれて初めて、者のために慟哭していた。
「すまなかった、兮兮……。俺が愚かだったばかりに、おたちをこんな目に遭わせて……本当に、すまなかった」
晏蕭は震える腕で、さな娘の体をく、温かく抱きしめた。
兮兮は父親の涙に驚いたように目を瞬かせ、やがてさなを伸ばして、晏蕭の濡れた頬をそっと拭った。
「……泣かないで、パパ。兮兮がパパを目覚めさせたんだから、今度はで、ママを目覚めさせにこうね」
初めて呼ばれた「パパ」という言葉。
その温もりが、え切っていた男の魂を完全に溶かしっていった。