"死んだ母を名乗る女" 第19話
が繋いだ縁とお見いの席
初の爽やかながを吹き抜けるの曜。 駅の老舗ホテルの本庭園に面した料亭の個で、し変わりな、だが温かな会がかれていた。
席についていたのは、私と兄の斗、そして池田文彦社と、息子の池田義親。 母のに記されていた「お見い」の言葉をきっかけに、文彦氏が正式な席を設けてくれたのだ。
「いやあ、こんな改まった席、慣れていなくて緊張しますね」 義親は普段の配達員の制ではなく、仕ての良いネイビーのスーツにを包んでいた。 し肩幅が窮屈そうに見え、ネクタイを直す指先が微かに震えている。 その器用で実直な姿に、私はわずクスッと笑ってしまった。
「池田さん、スーツ姿も素敵ですよ。いつもバイクに乗っている姿しか見ていなかったから、なんだか鮮です」 「あ、ありがとうございます……! 美咲さんも、そのワンピース、とてもよくお似いです」 義親がまで真っ赤にして俯くと、隣の文彦氏と斗が顔を見わせて破顔した。
「おいおい、義親。配達のはあんなに威勢がいいのに、女性のでは形無しだな」 「父さん、茶化さないでくださいよ!」 やかな笑い声が座敷に広がり、初対面のぎこちなさは瞬くに解けていった。
事を楽しみながら、義親は自分がなぜ企業の跡取りでありながら、郵便配達員として働いているのかを語ってくれた。
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学を卒業、現をらずに経営陣に入ることを嫌い、自らの志で物流の最線である郵便局に就職したこと。 毎をり、民のひとりと顔をわせ、域に暮らす々の活を肌でじることが、何よりも自分の誇りであること。
「私はね、美咲さん」義親は真っ直ぐな瞳で私を見つめた。 「あの、実のでお母様のことを必に守ろうとしていたあなたの姿を見て、から打たれたんです。族を切にし、理尽な悪に決して屈しないさを持ったあなたと、もっとお話ししてみたいといました」
胸の奥が、じんわりと温かいで満たされていく。 かつて母が病で言っていた言葉。 『美咲、誰かいいはいないの? 仕事ばかりじゃなくて、く幸せになりなさい』 あの、母の言葉を「うるさい言」のように受け流してしまっていたけれど、母はあの病の窓のを見つめながら、私にこんなにも素らしい縁を渡そうとしてくれていたのだ。
会の帰り、ホテルの庭園のを、私と義親はで並んで歩いた。 池の面には初の陽がキラキラと反射し、鮮やかな錦鯉が優雅に泳いでいる。 「美咲さん。……もしよろしければ、今度の曜、ドライブにきませんか? 美しい蕎麦のを見つけたんです」 義親のし照れくさそうな誘いに、私はからの満面の笑みで答えた。
「はい! んでお供します」