みかん小説
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"シャッターを切らなかった日" 第8話

作業を脱いだ男

岩崎さんに連れられて訪ねたには、畳のに作業が着置かれていた。

の主は森田清志さん。歳。の請けで配管の修理をしている。妻の妙子さんは台所で湯を沸かし、僕たちの話を聞きながら、茶碗をつ並べた。

「顔は撮らんでくれ」

森田さんは最初に言った。

「作業を撮ってほしい。これで飯をってることだけ、残したい」

畳のの着は洗いたてで、もう着は油が染みていた。胸の名札はされている。僕がレンズを向けると、妙子さんが言った。

「その写真をしたら、が悪くないみたいに見えませんか」

森田さんは妻を見た。

「悪くないとは言ってない」

「あなたが言ってなくても、見るがそううかもしれないでしょう」

僕はカメラをろした。の見が違うなら、今は撮れない。

森田さんはため息をつき、畳のを畳み直した。

「俺は会社を守りたいわけじゃない。ただ、町のの親戚から『そんな所は辞めろ』と言われても、から何をしてえばいいんだ」

妙子さんは湯みを置いた。

「辞めろと言うは、次の仕事まで用してくれないものね」

はく黙った。やがて妙子さんが僕に聞いた。

「写真を撮るに、説の文章を緒に考えてもいい?」

僕はうなずいた。

その夜は枚も撮らなかった。

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代わりに、森田さんが何にをて、どんな仕事をし、帰宅に何をするのかを聞いた。配管の故障は夜にも起きる。修理の途で怪をした同僚もいる。けれど、それらは排の責任と相殺できる話ではない。

森田さんのの柱には、子どもの背丈を測った鉛の線があった。僕はそこへ目を向けたが、写真に入れるつもりはなかった。のの細かな印は、のがうよりくを語る。森田さんの子が何歳か、どんな族なのかをらせる必はない。写真を撮らないにこそ、写してはいけないものが見えてくるのだとった。

帰り際、妙子さんは僕に言った。

「私たちが迷ってることも、けるのかしら」

「写真じゃなくても、言葉なら」

「じゃあ、言葉にする方を伝って」

僕は写真になりたいとっていた。だから、撮らないまま帰る夜が続くことに焦りもあった。それでも、何も残していないわけではないと、しずつわかってきた。

がけ、昭47のになった。

俣で撮を続けていたユージン・スミスさんが、千葉県ので患者たちに同した際、暴を受けて負傷したというらせが入った。聞の文字を見て、写真館の親方はく黙っていた。

「写真を撮るも、無傷ではいられんのか」

さんがつぶやいた。

僕は返事ができなかった。

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町のから来たが傷ついたことはだった。しかし、それを聞いて初めて俣の問題を自分のことのようにじるのなら、僕は今まで何を見ていたのだろうともった。

数、でアイリーンさんを見かけた。彼女はカメラをに、元のと話していた。僕は以、彼女を国写真の通訳としてしか見ていなかった。けれど、そのとき彼女が自分の判断でち位置を変え、相に写真のことを説しながら撮をめる姿を見て、恥ずかしくなった。

僕は名な写真の名ばかり覚え、隣で同じ仕事をするを見落としていた。

写真館へ戻ると、森田さんから伝言が届いていた。

《夫婦で相談しました。作業は撮ってください。ただし、文章はできます。》

そのを読んだ僕は、やっと撮のを決めた。

僕の仕事は、迷いのない顔を探すことではなかった。迷った末にされた答えを、勝に変えずに受け取ることだった。

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