"シャッターを切らなかった日" 第3話
名のない写真
の初め、恵子から読会へ呼ばれた。
公民館のさな部には、子が脚しかなかった。集まったのはほど。漁師をやめた、の夜勤けの、病気の認定を求めているの族、そして僕のように何も決められない若者がいた。
「写真を使ったさな展示をやりたいんです」
恵子が黒板にいた題は《俣で暮らす》だった。
「聞に載る写真だけじゃなくて、ここにむが残したいものを集めたい。写真がないは、言葉だけでもいい」
反対したのは岩崎正さんだった。歳で、の械修理を請け負う会社に勤めている。
「のの顔がたら、仕事を失うかもしれん。誰が責任を取る」
「顔をすかどうかは本に決めてもらう」
「そういう話じゃない。名を伏せても、作業着やの塀でわかる。町は狭いんだ」
岩崎さんの隣に座る老が、さくうなずいた。老は漁にられなくなっただった。は対しているようで、同じものを恐れていた。写真がひとり歩きすることだ。
僕は持ってきた写真を机に並べた。さんの箱、駅の自転、夕暮れの港。写真を見たたちは、なことを話し始めた。
「この箱、うちの親父が作ったんだ」
「そのはもう閉まったよ」
「いや、は隣へ移った。閉まったのは魚を置く方だけだ」
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僕の写真には何の説もなかった。だから、見るが違えば、まるで別の町になった。
僕は写真を枚ずつ裏返し、撮した付を確かめた。港の写真に写る箱は、もう使われなくなったものだった。若い漁師が「ここは昔のだ」と言うと、配の女性が「昔と言っても、ほんの数まで使ってた」と返した。僕がひとまとめにしていたを、んでいるはもっと細かく覚えていた。
「撮ったが説をいたらいいじゃないですか」
僕が言うと、さんが首を振った。
「写ってるにいてもらいな。覚えていることは、それぞれ違うから」
会が終わる頃、本枝さんが入ってきた。恵子が声を掛けたらしい。彼女は座らず、入にったまま、机の写真を見渡した。
「私のも撮りたいんだってね」
僕はちがった。
「すみません。あれから撮ってません」
「ってる。だから来たの」
枝さんは枚の注文票を机に置いた。学の袖直し、ブラウスの丈詰め、祭りの法被の修理。何件もの細かい文字が並んでいた。
「病気のことをられたくないんじゃない。ってほしいことはある。でも、だけ写されると、私は何もできないになるでしょう」
彼女は注文票の最のを指で押さえた。
「私は仕事をしてる。お客さんが来なくなったも、針を持った。それが見えない写真なら、私にはいらない」
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僕は初めて、彼女が何を断っていたのか理解しかけた。写真そのものではない。写真を見た誰かが、彼女のをつのに決めることだった。
そのの帰り、さんと会った。彼は会議の様子を聞くと、嬉しそうに言った。
「いいね。町のが自分で展示を作るなんて。うちでも記事にできる」
「ただ、写真の使い方はみんなで決めます」
「わかってるよ。まずは候補を見せてくれないか」
僕はし迷ってから、写真館でベタ焼きを渡す約束をした。記事になるなら、会を借りる助けにもなるとったのだ。
その夜、親方は僕が現像液を捨てるを止めた。
「誰に何を渡したか、覚えておけ」
「さんは、ちゃんとした記者です」
「ちゃんとしたでも、急いでいるときは違える」
親方は暗の赤い灯りを消した。
「ネガには撮ったものが残る。だが、渡したあとに何をされるかは、ネガに残らんぞ」
僕は、そのを軽く考えていた。