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"五歳で売られた天才少女、悪意を嗅ぎ分け父を救う" 第11話

鬼針と涙の抱擁

集治療の張り詰めた空気の、馬院のは微かに震えていた。 トレイのに然と並べられたのは、漢方医術の極致とされる極細の医療用針。 現代医学の最線をる軍総病院のトップたる彼が、歳の幼女の指示を仰ぐなど、常識ではあり得ない景だった。だが、先ほどゆえんがすらすらとき記した処方箋――当帰、、丹参、川芎、赤芍の絶妙な配比率を見た瞬、馬院は悟ったのだ。この女の脳には、古来の医がそのまま息づいている、と。

「院先、百会(ひゃくえ)のツボに真っ直ぐ、分(約センチ)入れて。加減しちゃダメ。迷ったら気が散っちゃうよ」 ゆえんの透き通った声は、熟練の師匠そのものだった。 馬院は唾を呑み込み、精神を研ぎ澄ませての頂部へ針を刺入した。 続いて、両の(ごうこく)、内関、の太衝(たいしょう)へ、ゆえんのさな指先が指示する寸分の狂いもない経穴へ次々と針が打ち込まれていく。

「これで、お薬のお呂で温めた血の巡りが、の悪い塊を溶かしにくよ……」 最の本目の針が首のろの府(ふうふ)に沈んだ刹、体モニターの波形がねがった。 ピーッという規則な子音がに乱れ、平坦にかった脳波が劇なスパイクを描く。

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「血圧昇! 脳圧が急激にしています……! 信じられん、血栓が……血栓が拡散して血流が再している!」

馬院が叫んだその、ベッドのの男の指先がピクリといた。 「……ん……っ」 乾いた唇から漏れた、かすかな呻き声。 く閉ざされていたの瞼が、数のを押し破るように、ゆっくりとかれた。 焦点の定まらない瞳が、の病を彷徨い、やがてベッドの縁にへばりついて自分を見つめるさな顔へと吸い寄せられる。

「……ここは……? 母さん……? それに……この子は……」 掠れた声で呟くに、沈夫は泣き崩れながらその胸へとすがりついた。 「! ああ、! 目を覚ましたのね! この子はね、あなたの娘よ! 蘭さんとのにまれた、あなたの血を分けた娘なのよ!」

の瞳が激しく揺れた。 「蘭の……? 俺の……子供……?」 ゆえんは胸元から、あののペンダントをそっと引きし、の荒れた掌のに乗せた。 「パパ。ゆえんだよ。陸ゆえん。ママが言ってたよ、この首飾りはお父さんがくれた宝物だって。……ずっと、会いたかったよ」

、度も呼ぶことのできなかった言葉。 男の頬を、い涙が止めどなく伝い落ちた。 かつて戦で線を潜り抜け、いかなる拷問にも屈しなかった屈な戦士が、が子のさな体を抱きしめ、子供のように声をげて泣いた。 「すまない……すまなかった、ゆえん……! 今まで苦しいいをさせて……本当に、すまなかった……!」

病を満たす嗚咽と温もり。 だが、奇跡の再会の裏で、の脳裏には、彼をこの線へと突き落とした黒い記憶が、鮮に蘇りつつあった。

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