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"五歳で売られた天才少女、悪意を嗅ぎ分け父を救う" 第9話

第病棟の異様な気配

省都・第軍総病院。 国のや級軍専用の特別病棟は、厳な警備兵がち並び、独特の消毒液の匂いが漂っていた。 沈夫は軍の慈善連盟の会として、定期に症患者の慰問をっていたのだ。

ゆえんは沈夫の温かいに引かれながら、い理の廊を歩いていた。 すれ違う医師や護師たちが、沈夫に々と敬礼を送る。 「沈夫、本の巡回、ご苦労様です」 「ええ。皆様、治療の経過はいかがですか?」

そのだった。 側の奥く、厳な扉で隔された『集治療エリア』のに差し掛かった瞬、ゆえんのがピタリと止まった。 腔をくすぐったのは――悪臭ではなかった。 微かな、しかし懐かしく、温かい……まるで幼い頃のので嗅いだことのあるような、檀と松のヤニが混ざりった、清々しいり。

「……パパ?」 ゆえんの瞳がきく見かれた。 「ゆえんちゃん、どうしたの?」 沈夫がち止まる。

ゆえんは沈夫のを振り解き、制止する警備兵の脇をすり抜けて、第病のドアへと駆け寄った。 「パパ! パパがいる!」 「こら、お嬢ちゃん! ここはち入り禁止だ!」 警備兵が慌ててゆえんを抱きげようとしたが、沈夫が鋭い声で制した。 「待ちなさい! ……ゆえんちゃん、何を言っているの? この部の患者さんは……」

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沈夫は病のプレートを見て顔を曇らせた。 『患者名:(ナンシャン) 元・戦傷昏患者』 ヶ、方の国境帯で特殊部隊によって救されたものの、全に無数の傷を負い、顔面は傷と変形により相が判別能、脳幹の損傷により植物状態が続いている名無しの傷者だった。

ゆえんは病のドアノブにびつき、ガチャリと扉をけ放った。 ベッドのには、部と顔面の半分を幾もの包帯で覆われ、無数の点滴チューブと呼吸器に繋がれた男が、物言わぬ屍のように横たわっていた。

沈夫が駆け寄り、ゆえんの肩を抱いた。 「ゆえんちゃん、見違いよ。このはお父さんじゃないわ。お父さんの写真はで見たでしょう? この方はお顔も違うし、お名も違うのよ」

「違う! 違えるわけないもん!」 ゆえんはベッドの縁によじ登り、横たわる男のを両で包み込んだ。 「この匂い、パパの匂いだもん! ママが言ってた、パパの首飾りの匂いと同じだもん!」

「ゆえんちゃん……!」 沈夫が引きそうとしたその、ゆえんは男の顔を覆う皮膚のえ際を、さな指先でじっと見つめた。 そして、驚くべき言葉をにしたのだ。

「おばあちゃん、パパはお顔を化かしてるの! これ、本当のお顔じゃないよ! 『仮面』をかぶってるの!」

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