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"車椅子の妻を離島に置き去り――船上の夫が見たもの" 第12話

黒いファイル

私は姉と枝先に相談し、自分の類や類を取りに自宅へ戻るを決めた。啓介がのを確認し、必なら第者のち会いを求める。私たちのまいは賃貸で、契約者は夫婦の連名だった。私は自分の物を取りに入る権利があるが、夫の私物を勝に持ちしてよいわけではない。枝先はその境界を丁寧に説した。

斎の机の引きしには鍵がかかっていた。私は無理にけようとはしなかった。代わりに、共同で使っていた類棚から私名義の通帳、保険の通、事費の領収を探した。すると棚の奥に、私の名が表にかれた黒いファイルがあった。見覚えのないものだったが、表には「野千紗 活支援関係」と印刷されていた。

には青葉活支援センターの相談票が複数入っていた。最初の相談は半。私はそのころ、ようやくで子を操作して所の図館へけるようになった期だった。ところが類には「会話がかみわず、銭の管理が困難」とかれている。夫が私の活を見ていたはずの半が、まったく別の物語にき換えられていた。

「これ、あなたが署名したもの?」。姉が枚の用を指した。そこには「財産管理に関する委任の希望」とあり、私の名に似せた署名が記されていた。

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私は首を振った。署名の形が違うだけでなく、私はその用のをらない。枝先は写真を撮り、原本の扱いについて記録を残すよう指示した。で誰が何を持ちしたか争いにならないよう、私たちは確認したものを枚ずつ覧にした。

さらに奥から、民の融相談会社の資料がてきた。「成見制度」「任見契約」「財産管理委任」という言葉が並んでいる。枝先は「これらは別々の制度です。ご主が希望するだけで、あなたの財産を自由に扱えるわけではありません」と説した。判断能力に問題がないへ成見を利用することはできず、任見や委任も本のが必だという。

私はその説を聞いて、し肩の力が抜けた。夫の類があるだけで、すべてが奪われるわけではない。それでも夫が私の判断力を失わせたことにしようとしていた事実は変わらない。私は事故でを傷めたのであって、自分のを選ぶ力を失ったのではない。夫はその違いを、都よく消そうとしていた。

ファイルのろには、青葉活支援センターの見積が挟まれていた。額利用料、保証、入居準備費用が細かく記されている。私が入居すれば、夫は自宅での介助かられられる。そこまでは理解できた。だが見積の余には、別の数字がきされていた。

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「契約百万円」「残百万円」「清算期限末」。施設の利用料とは桁が違う。

私はその数字に見覚えがあった。啓介は数から、友とさな貸別荘事業を始めたいと話していた。私は反対しなかったが、借をしてまで始めることには慎だった。事故、夫はその話をしなくなった。ところが黒いファイルには「岡企画」という会社の名刺と、貸別荘の改修事に関する見積が入っていた。

名刺の裏には啓介の字で「保証入に返済」とかれている。私はそのを見たとき、ようやく夫の指が震えていた理由にづいた気がした。夫は私のを欲しがっていたのではない。自分の返済期限に追われていたのだ。だから私の同を待てなかった。

そのとき姉が、ファイルの最に挟まった連絡先覧を見つけた。青葉活支援センターの担当者・瀬戸由梨の名が、施設の緊急連絡先とは別の欄にもかれている。そこには「族同等の連絡先」とあり、啓介のきで「本の状態を説済み」と添えられていた。

私は瀬戸さんに、何を説したのか直接聞かなければならないとった。もし彼女も夫の嘘を信じていたのなら、私のらないところで、さらにくの続きがんでいるかもしれない。

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