"一年後の請求書" 第19話
親子の背と、マスターの珈琲
俺はを込めて、煎りのマンデリンを丁寧にハンドドリップした。 湯気とともにちるなりが、カウンターを包み込む。 温めたカップに注ぎ、昭雄のに差しした。
「どうぞ、当自の煎りです」 昭雄は両でカップを包み込み、ゆっくりとをつけた。 目を細め、く息を吐きす。 「……美しいですね。苦の奥に、驚くほど優しい甘みがある。……愚息がこのを理解せず、ただの居座りの具にしていたかとうと、本当に申し訳なくいます」
「いえ、向さん。息子さんは……さんは、元気にされていますか?」 俺が尋ねると、昭雄はし目を細め、胸ポケットから枚の写真を取りして見せてくれた。
そこには、まみれのヘルメットを被り、に焼けた顔でツルハシを担ぐ、逞しくなったの姿が写っていた。 かつて内で見せていた、あの卑屈で気な表はどこにもない。 引き締まった元と、真っ直ぐにを見つめる力い瞳。
「現の親方から送られてきた写真です」昭雄が誇らしげに、だがし目をくして語った。 「毎筋肉痛で鳴をげているそうですが、度も無断欠勤せず、を運び続けているそうです。先の料には、私に『今分の返済です。迷惑をかけてごめんなさい』と、震える文字でかれたを添えて送してきました」
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「そうですか……」 俺の胸の奥にも、じんわりと温かいものが広がっていった。 過ちを犯さないなどいない。 切なのは、過ちを突きつけられたに、己の非を認め、を啜ってでもやり直す覚悟を持てるかどうかだ。 あの愚かだった若者は今、本物ののスタートラインにっているのだと確信できた。
「主様。あいつが百万円をすべて返し終えたそのには……あいつを連れて、もう度このに来てもよろしいでしょうか」 昭雄の真摯な問いに、俺は満面の笑みで力く頷いた。 「ええ、もちろんです。そのは、さんのために、とびきり美しくて苦い、最の珈琲を淹れてお待ちしていますよ」
昭雄は嬉しそうに頷き、最の滴まで珈琲をみ干すと、百円玉をカウンターに置き、「ごちそうさまでした」とれやかな取りでをてった。