"一年後の請求書" 第18話
カフェのしい
同じ頃、京の『カフェ・テツ』。 の爽やかなが吹き抜ける内には、以にも増してよい空気が流れていた。
返還された百万円の部を投じて導入した最の焙煎からは、これまでにない繊細で華やかな浅煎り豆のりが漂っている。 奥のプライベートブースは、用の落ち着いたワークスペースとしてリニューアルされ、壁には確でスマートな利用規約が美しくデザインされて掲示されていた。
【ワークスペースご利用のご案内】・基本利用:ドリンク杯につき分まで無料。・追加利用:追加オーダー、または百円のスペースチャージにて延能。・皆様が気持ちよく過ごせるよう、譲りいのをお持ちください。
誰が見ても目で理解でき、誰もが納得できるなルール。 その結果、席の回転率は劇に向し、隣のテレワーカーや読を楽しむ常連客たちが、マナーを守って代わる代わるブースを利用するようになっていた。
「マスター、しいエチオピアのウォッシュド、すごく美しいです!」 カウンターで由里さんが、透き通った琥珀の液体を嬉しそうに喉へ流し込んだ。 「以みたいに、奥の席を気にしながらコソコソお茶をむ必がなくなって、本当に居が良くなりました」
「ありがとうございます。皆さんがマナーを守って支えてくださるおかげですよ」 俺が照れくさそうに笑っていると、入のドアベルが鳴った。
入ってきたのは、作業を着た初老の男性だった。 向昭雄だった。 以のような切迫した表ではなく、どこか憑き物が落ちたような、穏やかな笑みを浮かべている。
「いらっしゃいませ……あ、向様」 俺が背筋を伸ばすと、昭雄は静かにカウンターへ歩み寄り、軽く会釈をした。 「橘主様。ご無汰しております。くまで仕事で参りましたので、寄らせていただきました」
「どうぞ、お掛けになってください。……温かい珈琲を淹れましょうか」 「はい。ぜひ、主自の杯をいただきたいです」