みかん小説
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"一年後の請求書" 第1話

珈琲のりと招かれざる居候

初の柔らかな差しが、真しい製ドアのすりガラス越しに差し込んでいた。 俺の名は、橘鉄(たちばな・てつ・歳)。勤めた堅商社を脱サラし、のだった自焙煎珈琲『カフェ・テツ』を駅の裏にオープンさせたばかりの、骨の髄までコーヒーをする男だ。 内には、焙煎から漂う煎り豆の芳醇でほろ苦いアロマが満ち、ヴィンテージのスピーカーからは落ち着いたジャズが静かに流れている。 「うん、今もいい具に豆が膨らんだな。挽きたてのりは格別だ」 カウンターでハンドドリップのケトルを傾け、丁寧に蒸らしを入れる。琥珀の雫が滴ずつガラスサーバーへと落ちていくその瞬こそが、俺にとって至福のひとときだった。

カランコロン、とドアベルが軽やかな音をてた。 「いらっしゃい! ちょうど今、エチオピアのイルガチェフェを挽いたところですよ」 「えっ、本当ですかマスター! やった、いただきます!」 やってきたのは、所のデザイン事務所で働く常連のOL・由里さんだ。彼女はいつも午のブレイクタイムにち寄り、煎りの杯を美しそうにみ干しては、笑顔で職へと戻っていく。 「あ、それとマスター、お会計のにリンゴジュースをテイクアウトでお願いできますか? 事務所の輩に差し入れしたくて」

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「まいど! んで準備しますね」 自分で言うのもなんだが、試錯誤をねたハンドドリップの評判は々で、オープンから半が経過したの経営そのものは極めて順調だった。

しかし――由里さんがふと、の最奥にある掛けの半個ブースへと線を向けた瞬、その表がサッと曇った。 「……マスター、ちょっといいですか?」 「ん? どうしました?」 「あの……奥の席でゲームやってる男の子、もしかして……まだいるんですか?」 俺はわず苦笑いを浮かべ、肩をすくめるしかなかった。 「ああ……ええ、まあ、そうなんですよ」

「嘘でしょ!? 昨も私、夕方に来たにお見かけしましたよ? っていうか、先週も、そのの週も……あの、ここにんでるんですか?」 由里さんが呆れたように眉をひそめるのも無理はなかった。 の奥、コンセントが設置された壁際の特等席。 そこに陣取っているのは、隣の私学に通う学・向(ひゅうが・あきら・歳)だった。 彼ののテーブルには、朝番に注文した最値のブレンドコーヒー(杯百円)が、氷の溶けきった状態で放置されている。そしてその横には、持ち込みの型ゲーミングノートPC、る却ファン、タブレット端末、スマートフォンの台が所狭しと並べられ、タコ配線のコードがをっていた。

ガチャガチャ、ターン! と、内に響き渡るけたたましい打鍵音。ヘッドホンを首にかけ、ボイスチャットで仲と騒ぎながら、オンラインのアクションゲームに没している。

午のと同に番乗りで滑り込み、閉の午まで丸。 追加オーダーは切なし。無料で提供されるだけを何杯もおかわりし、トイレと喫煙のために席をつ以は、ひたすら無料Wi-Fiと力を貪り尽くす。 「鉄さん、マスターとして注した方がいいですよ。のお客さん、あの席使いたくても諦めて帰っちゃってますから」 由里さんの言葉は、胸にく突き刺さった。 切な常連客に気を遣わせ、のよい空気をぶち壊す居座り客。 いよいよ、腹を括るが来たようだった。

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