みかん小説
本棚

"昭和39年、給食費泥棒にされた少女" 第6話

なくなり始めた資料

森先のをたあと、私は駅の喫茶に入った。

めかけたコーヒーをに、先の言葉をい返した。

『あなたがいなくなれば、全部終わるとっていた』

先は、私を棒だと信じていたのではなかった。

私を学から追いすために、あの騒ぎを利用した。

そのことを、本のから聞いた。

けれど、なぜそこまでしなければならなかったのか。

箱には何が入っていたのか。

私は、まだらなかった。

翌朝、役から再び連絡があった。

「岸田さん。学の資料理は、予定よりく終することになりました」

「どういうことですか」

「解体作業の程が変更されまして。来週から業者が入ります」

私は驚いた。

「先、まだ週以あると聞きましたが」

「事の都です」

私は話を切り、すぐに学へ向かった。

のには、見慣れないトラックが台まっていた。

作業員が段ボール箱を運びしている。

私はくにいたに尋ねた。

「その箱は、どこへ運ぶんですか」

「廃棄する資料です」

私は慌てて箱を見た。

昭代から代の帳簿が混じっている。

「これは、まだ理が終わっていません」

作業員は困った顔をした。

「でも、役から処分するよう言われています」

私は担当職員に話をかけた。

「資料のに、保が必なものがあります。

広告

確認が終わるまで待っていただけませんか」

職員はしばらく考えた。

「司に相談します」

結局、そのの処分は部延期された。

しかし、私はになった。

資料が消えてしまえば、のことを調べるがかりもなくなる。

私は、すでに閲覧できた資料の複写を理し、原本の保管所と確認を記録した。

そのの夕方、父のに戻ると、杉本正彦が来ていた。

父は先の子に座り、正彦はったまま話していた。

「岸田さん。昔のことを調べるのも結構ですが、町に迷惑がかかっているんです」

私はづいた。

「杉本さん。父に何のご用ですか」

正彦は振り返った。

「子さん。ちょうどよかった」

父は私を見て、さく首を振った。

「丈夫だ。何も配することはない」

正彦は、私に向かって言った。

「学の資料を勝に持ちしているという話があります」

「持ちしていません。閲覧が認められた資料を複写しただけです」

「それなら、よろしいんですが」

正彦は、封筒をつ差しした。

には、町の広報に掲載する予定だという文案が入っていた。

『昭の費問題については、記録の保状態が完全であり、事実関係の確認は困難である』

私は文案を読み終えた。

「まだ調査している途です」

「だからこそ、これ以騒ぎをきくしないほうがいいでしょう」

広告

「私が盗んでいなかったことは、帳簿で確認できます」

「帳簿の部分だけでは、何とも言えません」

私は正彦を見た。

「森先も、私が盗んでいなかったと認めました」

正彦の表が変わった。

「森先に会ったんですか」

「はい」

「……そうですか」

正彦は、しばらく黙っていた。

そして、い声で言った。

「先も齢です。あまり昔のことを責めないでいただきたい」

私は答えた。

「責めるためではありません。事実をりたいんです」

「それで誰が幸せになるんですか」

私は言葉を選んだ。

「なくとも、、棒と呼ばれてきた私と族には必なことです」

正彦は、それ以何も言わなかった。

帰り際、父へ軽くをげ、そのままをた。

父は、しばらく黙っていた。

「子」

「何?」

「おが子どものころ、先に逆らえなかったは勢いた」

私はうなずいた。

「でも、今のおは違う」

父は、油のついたを布で拭いた。

「誰かに慮して、本当のことを途でやめる必はない」

私は父の隣に座った。

、父は私を守ろうとしてくれた。

今度は私が、自分の言葉で事実を確かめる番だった。

翌、文から話があった。

「子ちゃん。会って話したいことがあるの」

私たちは、昔の商の喫茶で会った。

文は、席に着くなりをげた。

「ごめんなさい」

私は驚いた。

「どうしたの?」

「のこと」

文は、膝のでを握っていた。

「私、本当は全部覚えているの」

私は黙って聞いた。

文は、ゆっくり話し始めた。

の朝、森先は文を職員へ呼んだ。

そして、私が引きしをけていたのを見たかと尋ねた。

文は正直に、見たと答えた。

すると先は言った。

『子さんは、おの入った封筒を触っていたかもしれません。みんなのために、っていることを話してください』

文は戸惑った。

『でも、子ちゃんがおを取ったところは見ていません』

先は、し考えてから言った。

『見たことだけでいいのよ。ただ、先に聞かれたら、はっきり答えなさい』

文は、そのとおりにした。

私が引きしをけたことだけを話した。

けれど、先はそれを、私がおを盗んだ証拠のように扱った。

「私、途でおかしいとったの」

文は涙を浮かべた。

「でも、みんなが子ちゃんを見ていたから、怖くて何も言えなかった」

私は、の教をいした。

文は、私を見なかった。

あのとき、彼女も怖かったのだ。

「文ちゃん。今、話してくれてありがとう」

「許してくれる?」

私はすぐには答えられなかった。

「まだ、分からない」

文はうなずいた。

「それでいいの」

彼女はバッグから古いノートをした。

「これ、私が学のころの記」

私は受け取った。

昭のページには、子どもらしい字でかれていた。

『今、子ちゃんがどろぼうと言われた。先は私の見たことを聞いた。でも、子ちゃんがおを取ったところは見ていない。言えばよかったのかな』

私は、そのページをく見つめた。

文は続けた。

「もし役につなら、持っていって」

私はうなずいた。

「ありがとう」

文は、もうつ教えてくれた。

「子ちゃんが転したあと、森先は度、教で話したの」

「何を?」

「費の件は解決したから、もう話題にしてはいけないって」

私は顔をげた。

「解決した?」

「そう言ったの。おが戻ったとも、誰が盗んだとも言わなかった」

私は考え込んだ。

おは最初からなくなっていなかった。

それなのに、私が転すると同に問題は終わった。

やはり、私をいなくすること自体が目だったのだ。

帰宅すると、留守番話にメッセージが入っていた。

森先からだった。

『子さん。先は分に話せず、すみませんでした』

しがあった。

『私も、もう逃げるのはやめようといます』

私は話のにった。

『当の記が残っています。学のことも、杉本先のこともいてあります』

そして最に、先はこう言った。

『ただ、その記を見せるに、つだけお願いがあります』

私は受話器を握った。

『好トミさんに、会わせてください』

、突然学を辞めた女調理員。

そして、私を棒にした担任。

のには、まだ私のらない来事があった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: