みかん小説
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"雨宮停留所の黄色い傘" 第4話

の向こうにいた

佐子さんの夫はにくなっていた。町のの話では、では厳しい父親だったが、では礼儀正しく、町内会の役も務めていた。信夫がいなくなったあと、彼は「のを持って逃げた」と言いふらしたらしい。だが、警察の記録には盗難の届けがなかった。

私は佐子さんのを訪ねた。現は姪が管理しており、財具の部が残っている。押し入れの奥に、古い裁縫箱と、聞に包まれた類箱があった。姪は「伯父がくなったとき、処分しきれなかったものです」と言った。

類箱には、公共料の領収、学の通表、町内会の資料が詰まっていた。底のほうから、信夫の作文がてきた。学のときにいた「族について」という題の作文だった。

『母は、帰りが遅い父のために、毎晩ご飯を温め直す。父は、母が何を言っても聞かない。ぼくが母をかばうと、父はのことにをすなと言う。ぼくは、母を連れてをたい。でも、母は父をにできないと言う。』

作文はそこで終わっていた。先の赤い字で「よく考えてけています」とかれている。私は、胸の奥がくなるのをじた。信夫はから逃げたかったのではなく、母を連れていきたかったのかもしれない。

塚は作文を読むと、顔を覆った。

「彼は、あの夜も母親を連れていくと言っていました。

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でも、佐子さんはに残った。ご主が倒れていたからです」

「倒れていた?」

「その夜、ので夫婦喧嘩があったと、所のから聞きました。信夫くんは父親を押しのけて、母親を連れそうとした。でも、佐子さんは夫のそばをれなかった」

私は、佐子さんが留所で待ち続ける理由を考えた。彼女は息子が帰るのを待っているのではなく、あの夜に自分がけなかった所へ、だけを送り続けているのかもしれない。

類箱の底に、封筒が数通あった。どれも信夫から母へ宛てられただった。宛先はこの。消印は、、神奈川、。最も古いものは、失踪からに届いている。封はつも切られていなかった。

私は封筒を持ちげた。古いから、たいの匂いがした。

封筒の束のには、父親の字でかれたメモがあった。

『佐子には渡すな。あいつが戻れば、またを壊す。』

信夫は母にをき続けていた。

では、なぜ彼は度も帰ってこなかったのか。

その夜、私は自分の携帯話に、らない番号から留守番話が入っているのを見つけた。

再すると、若い男の声がした。

「宮の留所に、黄い傘を置いてきました。母さんに、まだ見つけてもらえていません」

声は、ののものだった。

姪は、信夫がいなくなったの族写真を見せてくれた。

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写真には、佐子さん、夫、信夫のが写っている。佐子さんだけが笑い、夫はカメラから目を逸らしていた。信夫は制の胸ポケットに、い布を差している。

「この布は何ですか」

「母親が縫ったハンカチだといます。信夫さんはずっと持っていた」

写真を裏返すと、夫の字で「族旅、で止」とある。付は失踪の週だった。族旅を計画していたのに、何かがあって止になったのだろうか。姪はそのことを初めて聞いたと言った。

の奥から、古いラジオが流れ始めた。源は抜かれている。雑音のに、若い男の声が度だけ混じった。

「母さん、今は来て」

姪は聞こえなかったと言った。私はラジオの裏を確かめたが、池も入っていない。止まった針が、午分を指していた。

姪は、族旅が止になった理由を調べるため、古い町内会の記録を探した。付の週、信夫の父親が階段から落ちて腕を骨折していた。佐子さんは病のため、旅にけないと親戚へ連絡している。信夫は「母さんも緒にこう」と誘ったが、母は父を置いていけなかった。

姪は、夫の斎から見つかった記と、信夫の作文を並べて見た。父親は病気のあと、自分で事を作ることを拒み、佐子さんがへることもくわなかったらしい。

信夫はそれを見て、母を連れてる計画をてた。

姪は「伯父は族を守るつもりだったのかもしれない」と言った。私は、守るという言葉が誰かを閉じ込めることもあると答えた。彼女は、初めて伯父の写真を裏返した。

私は、族写真の信夫の表が気になった。ほかのは正面を向いているのに、彼だけが母のほうを見ていた。写真を撮る直、母が何かを言ったのかもしれない。姪は、その写真を初めて額からし、裏側のを丁寧に剥がし始めた。

写真の裏を剥がすと、折り畳まれたさなメモが現れた。母親の姉の所と、信夫の字で「母さんも緒に」といてある。旅が止になったあと、彼は母を連れてをる段取りをしていた。姉のが空きだとらず、彼はその所を頼りにしたのだ。

姪は写真を額に戻さず、封筒に入れて保管することにした。

姪は、写真を見られる所にだけ置いておくと決めた。

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