みかん小説
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"三千円の温泉旅行" 第2話

き夫とった宿

町内の美代さんのへ案内状を届けただった。

玄関先でを受け取った美代さんは、目を指でなぞると、ふっと目を細めた。

「静子さん……恵の湯って、あの恵の湯ですか?」

「ごじなの?」

「ええ。くなった主と最に泊まりがけでかけたのが、あそこなんです」

美代さんのご主がくなったのはだった。病気が見つかるし、で隣町の温泉へったという。

「駅からタクシーだったから、はもう覚えていないんですけどね。栗ご飯がおいしくて、主が回もお代わりしたんですよ」

美代さんは笑いながら話したが、その目にはしだけ涙が浮かんでいた。

「もう度けるなんてっていませんでした。今度は主の写真を持ってこうかしら」

「ぜひ。ゆっくりお湯につかってきましょう」

そのの私は、美代さんがそれほど楽しみにしてくれていることが純粋にうれしかった。

ところが、それからほど経った頃から、妙なことが起き始めた。

町で婦部のと顔をわせても、旅の話をすると急に数が減るのである。

「旅、楽しみね」

私がそう言うと、「ええ、まあ」と曖昧に笑うだけのもいた。

最初は気にしなかった。旅までまだにちがあるし、庭の都で参加できなくなるもいる。それくらいは毎あることだった。

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ところがある夕方、美代さんから話がかかってきた。

「静子さん。ちょっと確認したいんですけど……恵の湯って、事で休みになったんですか?」

私はわず受話器を握り直した。

「事?」

「矢野さんから話があって。建て替え事で休みになったから、今は鶴亀楼という旅館に変更になったって」

鶴亀楼。

隣町ではられた級旅館だった。豪華な会席料理が売りで、帰りでも万円を超えることがあると聞いている。

「誰が変更を決めたの?」

私が聞くと、美代さんは困ったように答えた。

「矢野さんは、福田会も承していると言っていました。婦部のには順番に連絡しているそうです」

胸の奥がざわついた。

役員会で変更を決めた覚えなどない。

それどころか、福田さんからはに「男が栗の仕入れを始めた」と聞いたばかりだった。

「美代さん、私から会に確認してみるわ」

そう言うと、美代さんはし沈黙してから、もうつ教えてくれた。

「矢野さんから、静子さんには言わないでって言われたんです。バスの配が変わると会計がうるさいからって」

話を切った、私はすぐに福田さんへ連絡した。

「恵の湯が事で休みになったという話を聞いたんですが」

「何を言うとる。今も営業しとるぞ」

福田さんの声が段くなった。

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「き先を変えた覚えもない。鶴亀楼なんて話は初じゃ」

私はしばらく言葉がなかった。

誰かの勘違いではない。

矢野夫が、婦部のたちだけに別の旅を案内している。

しかも、町内会も認めていると嘘をついて。

そのの夜、副会である矢野さん本ががを訪ねてきた。

「内が言うには、積が余りすぎているのはおかしいそうでしてね。のため帳簿を見せてもらえませんか」

私は黙って帳簿を差しした。

副会は数ページをめくっただけで、内容をほとんど読まなかった。そして携帯話を取りし、見きのページを写真に撮った。

「内に見せますので」

「どうぞ。ただし、そのページだけでもバス代、宿泊費、繰越まで全部載っていますから」

副会は曖昧にうなずいて帰っていった。

玄関が閉まると、務が居からてきた。

「読まずに写真だけ撮っていったな」

「ええ」

「まあいい。数字は消えないし、案内状にも目から全部いてある」

私はその言葉を聞きながら、なぜか嫌な予を拭えなかった。

矢野夫は、ただ級旅館へきたがっているだけではない。

もっと別のことを考えている。

そんな気がしてならなかった。

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