"昭和三十九年、父の止めた記事が暴いた新聞記者親子の真実" 第9話
今のお話、すべて取材ノートとテープレコーダーに記録させていただきました」
達也は胸ポケットから型のポータブル録音を掲げて見せた。ハッタリだった。スイッチは入っていたが、音でどこまで録音できているかは分からなかった。しかし、帝都物産の課は目を見張り、瞬で顔を変えた。
「無断録音か! 卑劣な真似を!」
「卑劣なのはどちらですか! 優越位を乱用して請け企業を脅迫し、真実を握りつぶそうとする為は、独占禁止法にも抵触します! の朝刊で、このの現を実名で報します!」
達也の鋭いに、課は舌打ちをし、机のの類を乱暴に掴み取った。
「気な僧め……悔するぞ!」
課は捨て台を吐き、事務所をにてった。黒塗りのセダンが、沫をげてりる音が響いた。
静まり返った事務所で、神崎社はそのにへたり込み、両で顔を覆った。
「佐伯さん……どうして来たんだ……。これで、うちは本当に終わりだ……今末で倒産だ……」
「社、諦めないでください」
達也は神崎のに膝をつき、その震える肩にを置いた。
「会社を潰させはしません。世論はいています。今朝の記事がてから、労働省と通産省が帝都物産に対する緊急ち入り調査の検討に入ったと、本社の遊軍記者から連絡がありました。
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企業が暴力で真実をもみ消せる代は、もう終わるんです」
その、事務所の奥の引き戸が静かにいた。
作業着姿の森初がっていた。そのろには、包帯を巻いた女や、埃まみれの角巾をつけた数の若い員たちが、そうにを寄せっていた。
「初さん……」
初は達也を見つめ、次いで神崎社のやつれた背を見つめた。
「社……私たち、をきました」
初が差ししたのは、油染みのついた何枚もの便箋だった。そこには、拙い文字で、女たちのいがびっしりと綴られていた。
『社、私たちはが好きです。故郷に仕送りできるのは、社が私たちを雇ってくれたからです。休ませてほしいと言ったのは、を辞めたいからではありません。これからもここで、みんなで布を織り続けたいからです』
神崎社は便箋を受け取り、粒の涙をボロボロとのに落とした。
「みんな……すまない……すまない……!」
初は達也に向き直り、く、々とをげた。
「聞さん、ありがとうございました。今朝の聞、寮のみんなで読みました。……私たちの名はていなかったけれど、私たちの苦しみが、ちゃんとそこにいてありました。誰も悪者にしないで、私たちの本当の声をいてくれて……本当に、ありがとうございました」
達也の胸の奥底から、いものが込みげてきた。
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を裁くための記事ではない。
をかすための記事。
父が命がけで守ろうとした「ペンの力」の本当のが、今、女たちの涙と笑顔を通して、達也の魂の奥に刻み込まれていた。
達也が放った撃は、度経済成に沸く本社会の急所を確に撃ち抜いていた。
翌、の央やテレビ各局が、聞のスクープを追いする形で斉に「オリンピック景気の暗部」「商社による請法違反」を々に報じ始めた。
国会でも社会党の議員が聞の面を掲げて政府を追及し、労働臣が「絹紡をはじめとする繊維業界の請け実態について、徹底な緊急査察をう」と答弁する事態へと発展した。
事ここに至り、帝都物産はついに全面な謝罪に追い込まれた。
当な単価切りげの撤回、絹紡に対する適正な代の即決済、さらには同の労働環境改善のための設備代化資を元請けとして無利子融資することが、記者会見で発表された。
聞社への広告引き揚げ通告も、世論の猛反発を恐れた帝都物産側から平で撤回された。
「勝ったぞ……!」
夕刊の面を見届けた編集局で、デスクの梶が机を叩いて歓声をあげた。若い記者たちが達也の周りに集まり、その肩を叩き、健闘を称えった。
しかし、達也のはどこまでも静かだった。
狂乱のような騒ぎの、達也は論説のにった。