"昭和三十九年、父の止めた記事が暴いた新聞記者親子の真実" 第8話
「帝都物産の繊維第課には、昨夜の半に自宅へ当てて取材を申し込みました。『コメントできない、広報を通せ』の点張りで取材を拒否されたため、その経緯も記事の末尾に記載してあります。絹紡に提示されていた納品単価の類も、社印が押された現物の写真を控えてあります」
「そんな言い訳が通用するか!」島田が顔を真っ赤にして鳴りつけた。「相は国策のオリンピックを支える企業だぞ! 方の僧が、丁に正義面して引っかき回していい相じゃないんだ!」
「島田君、言葉が過ぎるぞ」
論説のい扉がき、誠が静かに歩みてきた。
フロアの号が、ピタリと止まった。
誠はにした朝刊を広げ、島田の先へ突きつけた。
「この記事のどこに誤りがある。絹紡の女子員名が換気全で倒れ、うち名が現も隔療養であることは、警察病院の診断で裏が取れている。帝都物産が請けにした納入単価が、標準原価の割以であることも、通産省が定めた告示基準に照らせばらかな違法為だ。広告が引き揚げられるからといって、な正を見逃すのが、聞の社だったか?」
「佐伯先……しかし、限度というものがあります!」島田がいがった。「うちの経営がちかなくなれば、記者たちも飯がえなくなるんですよ!」
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「飯をうために魂を売るなら、聞社など畳んでしまえ」
誠の研ぎ澄まされた声が、編集局の隅々にまで響き渡った。
「この件の責任は、すべて論説委員である佐伯誠が負う。役員会への弁も、帝都物産への対応も、俺が引き受ける。だがな、現の記者が命を削って拾ってきた真実を、や権力の都で面から消すような真似だけは、俺がきている限り絶対に許さん」
島田は言葉を失い、悔しげに唇を噛んでフロアをっていった。編集局の森も、い溜息をついて自へと引き返した。
嵐のような号がった、誠は達也に歩み寄った。
「達也。休んでいる暇はないぞ」
「……え?」
「帝都物産は、記事をもみ消すために必ず次のを打ってくる。絹紡の神崎社のところへ役員を送り込み、裏わせをするか、あるいは取引止をチラつかせて『事実無根』の訂正広告をさせようとするはずだ。……すぐに墨田へべ。神崎と初たちを守るんだ」
誠の差しには、切の迷いがなかった。達也はくをげ、カメラとノートを鞄に詰め込むと、編集局をびした。
のが、墨田の運をに煙らせていた。
達也が絹紡の正にたどり着いた、にはすでに異様な緊迫が漂っていた。黒塗りのセダンが台、のに横付けされており、運転が傘を差して待している。
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事務所へ駆け込むと、内には声がび交っていた。
「神崎社、何を迷っていらっしゃるんですか!」
仕てのいいレインコートを着たの男が、神崎社の胸ぐらを掴まんばかりに詰め寄っていた。帝都物産の総務課だった。机のには、枚の面が広げられていた。
『聞の虚偽報に関する訂正および抗議』
「ここに判を押して、記者会見で『聞記事はすべて捏造であり、労働環境に問題はない』と証言していただくだけです。そうすれば、今回のオリンピック納品の代は全額即決済し、今の取引も継続をお約束します。断れば……分かっていますね? 今末の形は渡り、御社は倒産です」
神崎社は油まみれのを震わせ、机のの実印を見つめていた。その顔は蒼で、唇からは血が滲んでいた。
「し、しかし……聞の佐伯記者に話したことは、すべて事実です……うちの娘たちが倒れたのも、単価を削られたのも……」
「事実かどうかなど、世はどうでもいいんです!」帝都物産の課が酷に言い放った。「聞社社を潰すことなど、が社にとっては造作もない。だが、御社のような虫けら同然の町が、の帝都物産に逆らってき残れるとおいですか!」
「そこまでにしてください!」
達也が事務所の引き戸を蹴破るようにしてび込んだ。
「何だ、貴様は!」
「聞の佐伯です。