"「お前には継がせない」と言った父が、最後まで守り続けたもの" 第9話
「『旭町仕入れ組』です」 郎はを乗りし、鋭いで番を見据えた。 「軒のが個別に仕入れるからロットがさくなって負けるんです。調料、用油、麦、洗剤……持ちのする基礎料品と用品を、この軒が同で括発注します。佐々商の奥の倉庫を同の集積にして、荷受けも配分も全部うちが引き受ける。……田さん、これで百ケースのまとまった注文になります。取引の掛け率で卸してください!」
番は鏡をし、息を呑んで類を見つめた。 「ば、馬鹿な……商の連はみんな商売敵だぞ? あいつらがを組むはずが……」
「を組まなきゃ、全員揃って『まるよし』に首を吊らされるだけです!」 郎の声が帳に響く。 「俺が、商のを軒軒回って説得しました。『このままじゃごとぬぞ、き残りたければ俺に仕入れを預けろ』ってね。……田さん、あんただって『まるよし』の台で卸先を失いかけてるだろ! 俺たちを潰したら、あんたの商売も終わりだ!」
番は額の汗を拭い、い沈黙の末、そろばんを力く弾いた。 「……分かった。卸値、割分引きで通そう。その代わり、支払いは末現決済だ。でも遅れたら即座に止めるぞ!」
「ありがとうございます!」 郎は々とをげた。
に戻った郎は、健とともに倉庫の片付けに取り掛かった。
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く仕入れられる算段はついた。だが、郎の顔に油断はなかった。 さだけでは、資本力のある型に勝てる理はない。 いかにして、客のを「駅」から「この古い商」へと引き戻すか。 郎が温めていた本当の切り札は、まだ誰にもかされていなかった。
「健、の奥に眠ってた古い実用自転、油を差してブレーキを直したぞ」 に入った肌寒い朝、郎は荷台にきな箱を括り付けたな黒塗り自転をに引っ張りしてきた。
「兄さん、配達? でも、配達の注文なんて件も入ってないよ」 議そうに首を傾げる健に、郎は掛けの紐を締め直しながら言った。
「注文を待つんじゃない。取りにくんだよ」 「え……?」
「『御用聞き』だ。昔、親父がやっていた御用聞きを、今の代にわせて復活させる」 郎は自転に跨った。 「健、おは番を頼む。棚の埃を払って、誰か来たら元気な声で挨拶しろ。……俺は、の婆さんのへってくる」
ペダルを踏み込み、たいを切り裂いてをむ。 目指したのは、商の裏、古い造平が密集するの角だった。
トントン、とい硝子戸を叩く。 「のおばあちゃん! 佐々商の郎です! お体の具はいかがですか!」
奥から、引きずるような音とともに、腰の曲がった柄な老女が顔を覗かせた。
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かつて毎朝、佐々商へ噌を買いに来ていたウメ(歳)だった。 「……郎さん? 京へったんじゃなかったのかい……?」
「帰ってきましたよ、おばあちゃん」 郎はに膝をつき、目線をウメのさにわせた。 「膝を痛めて歩けないって聞きました。うちの親父が『の婆さんにうちの噌をわせてやりたい』ってうるさくてね。……はいこれ、今朝詰めたばかりの特選噌と、柔らかい菜です」
の婆さんの瞳に、ポロポロと涙が溢れした。 「あ……ああ……! 嬉しいねえ……! 駅のきながで売りに来るけどね、若い男のが突っ慳貪で、話も聞いてくれないし、噌もにわなくて困ってたんだよ……」
「これからは、毎週曜と曜の朝、俺が必ず顔をします」 郎は帳を取りし、丁寧に鉛をらせた。 「醤油の残り具も、ちりの庫も、俺が見て勝に補充しておきますよ。い灯油の缶だって、玄関の奥まで運びます。……おばあちゃん、何かに困ってることはありませんか?」
「実はねえ、球が切れちゃって、くてが届かないんだよ……」 「おい御用です! 今すぐ脚持ってきて替えますよ!」
その、郎はの齢者世帯を軒回った。 噌や醤油を売るだけではない。樋の詰まりを取り、い漬物をかし、世話にを傾ける。
型スーパーが徹底な効率化によって削ぎ落とした「ととの臭い」