"義母に逆らった妻を閉じ込めた夫が、翌朝失ったもの" 第8話
「今の連絡は、すべて文章でお願いいたします。話には度とません」
菜緒はそれ以相の言葉を待たずに通話を切断し、久美子の話番号を着信拒否に設定した。
通話録音の保を完させると、向かいの席に座っていた真紀が、嘆したようにさく息を吐いた。
「……菜緒、よく言ったわね。あのがあんなに取り乱した声、初めて聞いたわ」
「うん……」
菜緒はグラスの汗をナプキンで拭った。指先はまだわずかに震えていたが、それは恐怖からではなく、自分を縛り付けていた見えない鎖を自らので引きちぎったことによる、激しい興奮と解放の震えだった。
夕暮れ、の空が燃えるような茜に染まり始めていた。
スマートフォンの画面には、浩司からの着信が15件、狂ったような頻度で刻まれていた。
かつては「夫をらせてはいけない」と怯えていたその数字が、今や追い詰められた者たちの断末魔の叫びにしか見えなかった。
自分をトイレに閉じ込めたあの男が、次にどのような顔をして自分のに現れるのか。菜緒は徹な差しで、づきつつある決戦のを見据えていた。
週がけた曜の朝、菜緒は普段より30分くをて、都のオフィスへと向かった。
真紀のマンションから会社までは、乗り換えを含めて約1。
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これまで暮らしていた夫婦のまいよりもく、満員の揺れにを任せている、週末の激の疲労が鉛のように肩へとのしかかっていた。それでも、自分ので改札を抜け、オフィスの自席に座ってパソコンをちげた瞬、菜緒のに奇妙な静寂が訪れた。伝票の数字を打ち込み、試算表のズレを埋めていく経理のルーティンワークは、理尽なに支配されていた週末とは真逆の、厳格で公平な世界だった。
昼休み、湯でコップに湯を注いでいた菜緒の元へ、フロアの受付を担当している輩の女子社員がりで駆け寄ってきた。
「先輩、あの……エントランスの受付カウンターに、先輩のご主を名乗る男性が見えられているのですが」
輩の困惑した表を見て、菜緒の胸の奥で警報が鳴り響いた。
「主が? 何か言っていた?」
「はい……『妻が庭を放棄して勝に泊を続けているので、直接会って連れて帰る』とおっしゃって。かなり興奮されていて、守さんが今、応接スペースで押し留めています」
菜緒はく息を吐きし、制のジャケットの裾を正した。浩司は、職という公共のに乗り込めば、菜緒が世体を恐れて折れると踏んだのだ。かつてなら、同僚たちの好奇の目に怯え、慌てて夫の元へ駆け寄って宥めていただろう。
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しかし、今の菜緒はそのようなっぽい脅迫に屈するつもりは毛なかった。
菜緒は直属の課へ事を簡潔に報告した。「夫とので別居に向けた法な係争がじており、相方が業務妨害を企てている。本の面会は断固拒否し、守から退勧告をしてほしい」とをげた。経理のとして10以実直に勤務してきた菜緒の信頼はく、課は即座に総務部と警備担当へ連絡を回し、社のセキュリティ規定に基づいた毅然たる退命令を発令してくれた。
守から「これ以騒ぎてるなら警察を呼ぶ」と告げられた浩司は、エレベーターホールで悪態を吐きながらちったという。
午1を過ぎた頃、菜緒のスマートフォンに浩司からのメッセージがて続けに着信した。
『会社の連に恥をかかせやがって! 夫婦の問題を会社に持ち込むなんて常識がないのか!』 『おがそんな態度なら、こっちだって考えがあるぞ。直たちの借の保証、おの名義で作った類があるんだからな』
画面に表示された穏な文字列に、菜緒の線が凍りついた。
直の借の保証。おの名義で作った類。
菜緒は元のメモ帳に浩司のメッセージを正確にき写し、午休を申請して弁護士の松田が待つ法律事務所へと急いだ。
真紀の紹介で契約を交わした女性弁護士の松田は、浩司のメッセージの文面を見るなり、鏡の奥のを鋭くらせた。