"義母に逆らった妻を閉じ込めた夫が、翌朝失ったもの" 第3話
午638分。
静まり返った戸内に、鋭いインターホンの子音が鳴り響いた。
ピンポーン、ピンポーンと、を置かずに度鳴る。廊の奥の寝から、バタバタとベッドを抜けす音と、を引きずるような音が慌ただしくづいてきた。
トイレの扉のすぐで音が止まった。ガタガタと属製の突っ張り棒がされ、に放りされる音がした。
カチャリとドアノブの鍵が解錠される。
扉を側から引いた浩司は、寝起きの乱れた髪にスウェット姿で、苛ちをわにしながら菜緒を見ろした。
「おい……朝っぱらから誰だよ。お、何か頼んだのか?」
菜緒は無言のまま浩司の顔をまっすぐに見据え、歩だけ廊へと踏みした。目のに濃い隈を浮かべ、青ざめた表でち尽くす菜緒を見て、浩司は瞬だけ気圧されたように線を泳がせたが、すぐにいつもの尊な態度を取り繕った。
「なんだその目は。晩をやしたら、しは反省したのか?」
その言葉に返答することなく、菜緒は玄関へと向かった。インターホンが再び鳴る。
浩司が舌打ちをして玄関ドアのサムターンを回し、力任せに扉をけた。
「朝っぱらから何の用だ……」
の涼な空気とともにっていたのは、腕組みをして仁王ちする姉の真紀と、その隣で静な線を向けるスーツ姿の女性——真紀ので政士事務所に勤める松田だった。
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真紀は浩司の顔を瞥するなり、玄関のへ踏み込んで菜緒の首を取った。
「菜緒、られるわね?」
「うん」
「おい、ちょっと待てよ!」浩司が割って入ろうと声を荒らげた。「のに朝くから勝にがり込んで、何の真似だ! 夫婦喧嘩に野がを挟むな!」
真紀はえ切った差しを浩司に向けた。
「夫婦喧嘩? 妻を夜通しトイレに閉じ込めて鍵をかける為が、あなたのでは夫婦喧嘩で済むわけ? これ、派な監禁罪よ」
浩司の顔からさっと血の気が引いた。しかし、すぐに虚勢を張り直すように腕を組む。
「げさに騒ぐな! 昨の夜、うちの親に答えして暴れたから、しをやさせただけだ! 晩入ってただけで警察汰みたいな顔しやがって!」
「晩『だけ』?」
菜緒はく、しかし凛とした声でをいた。
「昨夜の21から今朝の6半まで、9以られないようにしたのよ。私は度も暴れていないし、あなたの母親の法な銭求を断っただけ。……浩司さん、私はもうこのには戻りません」
「はあ!? なに寝言言ってんだ! 荷物も置いてどこへく気だよ!」
「必なものはこれだけです」
菜緒は玄関のフックに掛けてあった仕事用のハンドバッグと、自分の通勤用コートをに取った。財布、スマートフォン、分証、そして職のIDカード。最限のものはすべて揃っていた。
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「おい、待てって! 母さんにどう説するつもりだ! 昨の無礼を謝るのが先だろうが!」
背から伸びてきた浩司のを、松田が帳を構えながら厳然と遮った。
「奥様に対するこれ以の物理接触はお控えください。状況はすべて記録しております」
浩司が呆然とをけたままち尽くす、菜緒は度も振り返ることなく、け放たれた玄関の扉をくぐり抜けた。のの朝気は痛いほどたかったが、吸い込んだ空気は驚くほど澄み渡っていた。
真紀の運転する軽自の助席に乗り込むと、菜緒の体の奥から刻みな震えが込みげてきた。張り詰めていた神経の糸が緩み、奥歯がカチカチと音をてる。
部座席の松田が、保温筒から温かいほうじ茶をコップに注ぎ、そっと菜緒の元へ渡してくれた。
「菜緒さん、よく耐えましたね。でも、あそこをたのは絶対に正しい判断です。あのままをねていたら、相の暴力の閾値はさらにがっていましたよ」
「……ありがとうございます」
湯気を吸い込みながら、菜緒はく息を吐きした。
午7半、真紀のマンションに到着した菜緒は、洗面所でたいで顔を洗い、借りたタオルで肌を拭った。鏡に映る自分の顔は気を失っていたが、瞳の奥底にあった迷いは消え失せていた。
菜緒はリビングのローテーブルにスマートフォンを置き、勤務先の直属の司へ話を入れた。