"黒い着物の誓い" 第7話
節くれだった両で、褪せた折りたたみ傘を抱きしめる。
「きて……こんなに派になられて……! よかった……本当に、よかった……!」 自分の息子の始末も忘れ、の女が無事にになったことを、から神に謝するように涙を流す幸恵。
これが、本物ののだ。 暴力でも、権力でも、でもない。 者の痛みをがことのように慈しむ、崇な魂の輝き。
祖父・源郎が、ゆっくりと幸恵のへとみた。 そして、持っていた杖をに置き、歳の老躯を々と折り、幸恵に向かって両を畳についてをげたのだ。
「……柊組代目、柊源郎と申します。……奥さん。孫の命を救っていただき、より……より御礼申しげます」
「ひいっ……! や、やめてください組さん! 私なんて、当たりのことをしただけで……!」 幸恵が慌ててをげさせようとする。
源郎は顔をげ、静かに座り込む赤へと線を向けた。 その声は、のように厳格だった。
「僧。……おの母親は、見ずらずののために全財産を差しせる、類まれなる気骨を持った本物のだ。……だが、おはどうだ? その母親の爪の垢を煎じてむどころか、者を見し、酒を浴びせ、己のさを隠すために虚勢を張っておる。……恥をれ!」
赤は両で顔を覆い、しゃくりあげるように泣きじゃくった。
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私は幸恵のを優しく取り、ちがらせた。 「お母様。……お伺いしたいことがあります」
「は、はい……?」
「赤君が抱えている消費者融の借百万円……。あれは、本当に彼自の遊興費だけなのですか?」
私の問いに、幸恵の表がピシリと張った。 そして、に突っ伏していた赤が、弾かれたように顔をげた。 「やめろ……! 言うな、母ちゃん!!」
「いいえ、言わせていただきます」 藤士が帳をいた。 「赤斗が借入をった期は、の。……幸恵さんが腸癌を患い、緊急術を受けた期と完全に致します。額療養費制度の適用となった先医療費、ならびにき父親が残した連帯保証債務の返済のために、斗氏が自らの名義で面した資です」
「……え?」 私は赤を見つめた。
赤は唇を噛み締め、血を流しながら、を殴りつけた。 「……そうだよ! 俺のはずっと貧乏だったんだよ! のだって、みんなが弁当ってる横で、俺はのんで腹膨らませてたんだ! 良のフリしてがってなきゃ、惨めでにそうだったんだよ! ……母ちゃんが倒れた、がなくて……サラにをして、首が回らなくなって……!」
赤の胸の奥底に溜まり続けていた、数分の膿が、涙とともに気に噴きしていた。
「同窓会に来たのも……みんなが派な仕事してんのが怖くて、自分が番惨めなのがバレるのが怖くて……だから、おを見して、自分を保とうとしたんだよ! ……俺は最だ! 母さんの顔にを塗って、恩のあんたを虐めて……クソ野郎だ!!」
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の男が、に突っ伏して子どものように泣き叫ぶ。 その慟哭のに、かつてのいじめの因縁は、しい代の傷跡として、静かにその輪郭を変えようとしていた。
「その百万円、私に肩代わりさせてください」
宴会の静まり返った空気の、私の放った言が凛と響き渡った。
に伏して嗚咽を漏らしていた赤が、弾かれたように顔をげた。額の血と涙でぐしゃぐしゃになった顔には、信じられないものを見たという困惑が浮かんでいる。 「な……何言ってんだよ……お、狂ったのか……? 俺はおをいじめて……さっきだって酒をからかけたんだぞ……!?」
幸恵もまた、震えるで私の着物の裾を掴み、激しく首を横に振った。 「だめです、お嬢さん! そんなこと、受け取れるわけがありません! 息子の仕かした恥の塗りを、被害者であるあなたに背負わせるなんて、親としてんでもできません……!」
「お母様」 私は腰を落とし、幸恵の節くれったを両で包み込んだ。 「、あなたがので差ししてくださった万円は、単なるおではありませんでした。あの夜、世界のすべてに絶望して消えてしまいたかった私に、『きていていいんだ』と教えてくれた、命の恩そのものです」
私は祖父の源郎を度見げた。 祖父は静かに目を閉じ、く頷いた。