"私の退職金を奪った家族に、私は何も言わず家を出た" 第3話
枕元に置いた計を見つめながらを澄ますと、廊の向こうから夫の押し殺したような話し声が聞こえてきた。く、何かの相談を持ちかけるような調のに、くぐもった笑い声が混じる。
翌朝、キッチンで朝の片付けをしていた麻の目に、カウンターに伏せて置かれていた竜太のスマートフォンの画面が留まった。通ランプが点滅し、ロック画面に着信履歴が表示されている。
『通話終:母さん 2342分(所:126分)』
普段、竜太と義母の話は「用件を伝え、お互いの健康を気遣って10分で終わる」のが常だった。真夜に1半くも、何を話し込んでいたのか。
胸の奥をたい滴が伝い落ちるような覚があったが、麻は問い質すことをみ込んだ。妊娠5ヶ、産婦科の助産師からも「今はを静に保つことが第ですよ」と言い含められていた。波をてたくないという保が、判断を鈍らせていた。
411の曜、昼がりに突然インターホンが鳴った。
事の連絡もなくがり込んできたのは、義母の久美子だった。麻がお茶を淹れて座布団を勧めると、久美子はリビングを値踏みするように見回し、膝ので両を組んだ。
「麻さん、退職、420万もたんですってね。竜太から聞いたわ」
やはり、あの真夜の話はこの件だったのだ。
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麻は背筋を伸ばし、静かに頷いた。
「はい。410に無事に振り込まれました」
「したものねぇ。でもね、麻さん。あなた、もう仕事を辞めて無収入になるんでしょ? だったら、そんなを自分の元に置いておく必なんてないんじゃないかしら」
久美子は湯呑みの縁を指先でなぞりながら、さも親なアドバイスであるかのように言葉を継いだ。
「おっていうのはね、番向いているが管理するのが番いいのよ。の財産なんだから」
「お義母さん、これは私の13の勤続に対する付です。これからの私の無収入期の活費や、産、子育ての備えとして、私が元で管理します」
「あら、うちの息子があなたと子どもをべさせないとでもっているの? 嫁がそんなを抱え込んで、夫を信用していないみたいでみっともないじゃないの。通帳、竜太に預けなさいよ」
久美子はそう吐き捨てると、お茶をみ干してにちっていった。
その晩、竜太は義母の来訪について言も触れなかった。卓に苦しい沈黙が横たわる、麻は帳の4を見つめ直した。夫の奨学を完済し、活を支えるための420万円。すべて「この」のために使う計画だった。
しかし、義母の言う「」と、自分が守ろうとしている「」のには、決して交わることのないい断絶があることを、麻はこのまだ完全には理解していなかった。
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413、曜の朝。
週末のぐずついた気が嘘のようにれ渡り、ベランダからは乾いたのが吹き込んでいた。竜太は午7半、「今週は展示会の準備で忙しいから」と言い残し、いつも通りの穏やかな表で勤していった。
洗濯を回し終えた麻は、午9を回ったところで、区役所へ提する類の確認のためにダイニングテーブルについた。元でスマートフォンのバンキングアプリをちげ、曜に着した退職の残を確認しようとした。
画面が読み込まれ、普通預の現残が表示された瞬、麻の界がく滅した。
『現残:862,140円』
臓が鐘を打ち、指先が凍りついたようにたくなった。
桁を見違えたのかとい、画面をリフレッシュする。何度更しても、表示される数字は86万円のままだった。元々その座に入っていた活費のプールだけが残り、曜に振り込まれたはずの「4,200,000」という数字が、も形もなく消えっていた。
震える指で入細のタブをタップした。
『413 09:03 振込 4,200,000円 オオツキ クミコ』
振込予約の受付は、夜——『412 2340分』となっていた。
昨夜、竜太は「はいから」と言って麻よりも先に寝へ入ったはずだった。麻が寝静まった夜、夫は暗のリビングへ抜けし、固定話から自音声の認証番号を聞き取り、妻の座から実母の座へ、420万円の全額送続きを完させていたのだ。