"300億円の恩返し" 第3話
『学は退します。から働きます。妹を施設に入れるくらいなら、僕がぬ気で稼ぎます』
兄は翌週、本当に学へ退学届を提した。 昼は建材加の倉庫でフォークリフトを操り、夜は駅の居酒の厨で皿洗いのアルバイトをした。 朝のに起きて私の朝を作り、夜のに油まみれになって帰宅する。 歳の若者が享受すべき青のすべてをドブに捨て、兄はただ私のために、をすするようにして働き続けた。
『ミレイ、の配はするな。おは勉しろ』
、兄のその言葉を何百回聞いただろう。 私がを卒業し、学の経営学部に学し、やがて「自分の化粧品ブランドをちげたい」と打ちけたも、親戚で唯、兄だけが満面の笑みで背を押してくれた。
『おならできる。俺の料から、最初の資本をしてやる』 兄が定期預を崩して渡してくれた、百万の通帳。 それが、世界に舗を広げることになったミレイビューティーグループの、最初の種だったのだ。
私が会社を興し、事業が急成を遂げてからも、兄は私からの経済援助を切拒み続けた。 級を買ってやると言っても、都内のタワーマンションを用すると言っても、兄は首を横に振った。
『俺はな、妹から遣いを貰うために育てたんじゃない。
広告
おが自分の力で派にきている、それだけで俺のは満点なんだよ』
兄は収取り万円らず、築・賃万千円の呂なしアパートにみ続け、私が正に無理やりプレゼントした革靴をだけ切に磨いて、毎朝に建材倉庫へと勤していった。
その兄が、の、登の社会サークルでの女性と会った。 それが、園部えり(歳)だった。
『ミレイ、俺……結婚するかもしれない』 の連休け、照れくさそうに話をかけてきた兄の声をいすたび、私の胸は締め付けられる。 、自分の欲望をすべて押し殺し、妹のためにを捧げてきた兄が、歳にして初めて見つけた「自分のための幸福」。
それを――このは、踏みにじり、嘲笑い、ゴミのように弄んで捨てたのだ。
「……えりさんは、どこにいるんですか」 私の静かな問いに、正子は怯んだように半歩退ったが、すぐに持ちの選民を取り戻して顎をしゃくった。
「えりは来ませんわよ! 当たりでしょう! あの子には、もっと相応しいお相がいるんですの!」
「相応しい相……?」
「証プライムの鈴製薬の御曹司、鈴亮介様よ!」 正子は勝ち誇ったように胸を張った。 「あちらは創業同士の素らしいご縁談ですの。の暮れからずっと面でお話がんでいてね。
広告
……でも、えりが妙な登サークルでこの男に引っかかってしまって、頑なに『結婚する』と言い張るものですから」
克彦常務が、額の脂汗をハンカチで拭いながら言葉を継いだ。 「あ、あのですね、会……いえ、未令さん。悪気はなかったんです。ただ、鈴製薬への体裁というものがありまして……。えりが度、元も定かでない男に狂ったという噂を消すために、『あんな冴えない男は、がので完璧に振って捨てた』という決定な証拠を、鈴にお見せする必があったんです……!」
「証拠……?」 私の声の温度が、さらに数度がった。
「そうよ!」正子が甲い声をげる。「先週の、うちの親族を集めて、この男に余興をやらせたのよ! 座敷の真んにたせて、くそなをわせてね! それを姪のリオに画で撮らせて、鈴の奥様に送って差しげたの! 『がはこんな庶民を相にするはずがありません、すべてはただのからかいです』ってね!」
の奥で、何かがプツンと切れる音がした。
兄が先週の親族顔わせの、夜遅くに話をかけてきて、どこか疲れた声で「、だってな」とだけ言って切った理由が、すべて氷解した。 兄はあの夜、親族同に囲まれて笑い物にされ、き母が台所でずさんでいたいの曲をわされ、嘲笑を浴びせられていたのだ。
それでも、妹の私に配をかけまいと、何も言わずにで耐えていたのだ。