"正月、娘に熱汁を浴びせた義兄へ110番" 第15話
そして、結のにどっかと胡座をかいて座り込み、結の元を覗き込んだ。
「結ちゃん。くなよ」 政治の声は、どこまでもく、どこまでも穏やかだった。 「、切ってないか? 破片が刺さってないか?」
「え……?」 結がおずおずと顔をげた。涙で濡れたきな瞳が、伯父の顔を見つめる。
政治は箒をかしながら、畳の目に沿ってガラスの破片を丁寧に集めた。 「皿はな、おをせば百円ショップでもどこでも買い直せる。……だが、結ちゃんのは、買い直せないんだ。だから、まずを見るんだよ」
「政ちゃん……らないの……?」 結の掠れた声に、政治はちり取りを置き、節くれだったきなのひらで、結のをくしゃりと撫でた。
「皿を割ってるがどこにいる。怪がないなら、それで終わりだ。……で、駅のスーパーにしい皿を買いにくぞ。結ちゃんの好きな柄のやつを選べ」
結の目から、粒の涙がポロポロと畳のに零れ落ちた。 しかし、それは恐怖の涙ではなかった。 張り詰めていたの氷が、温かいのぬくもりによって溶かされていく、堵の涙だった。
「……うん! うさぎさんの絵のお皿にする!」 「よし、うさぎだな。決まりだ」
政治が笑い、私も涙を拭いながら、割れた皿を包む聞を広げた。
失敗しても、鳴られない。 痛いは、痛いと言っていい。 壊れた物よりも先に、目ののの体を真っ先に配してもらえる。
そんな、世界の誰もが享受すべき「当たりの」を、私たちはかけて、ようやく完全に取り戻したのだ。
、しいお皿を買いにくために、結は政治とを繋いで玄関へ向かった。 「ママ、ってきまーす!」 「いってらっしゃい。に気をつけてね」
け放たれた玄関の向こうには、り輝くの青空が、どこまでも果てしなく広がっていた。 元気に駆けしていく娘のろ姿を見つめながら、私は胸にを当て、静かに、力く微笑んだ。
もう度と、理尽な悪に怯えることはない。 私たちは自分のでち、自分のするたちと共に、り輝くを堂々と歩み続けていく。