"時給951円と捨てられた妻の正体" 第15話
初の柔らかな差しが差し込む、葉の台に建つ級シニアレジデンスのバルコニー。 子に座る義父・修造の膝元に、私は温かいブランケットを掛け直した。
「お父様、が見えますよ。今は富士も綺麗に顔をしています」
修造はゆっくりと首を巡らせ、し自由になったを震わせながら、私のをぎゅっと握り返してくれた。 認能のはしずつんでいたが、私の顔を見ると、修造の瞳にはいつも変わらない、優しい父のが宿った。
「……葉。……自の、娘だ……」 途切れ途切れの、けれどの底からの言葉。
隣で編み物をしていた静が、鏡の奥の目を細めて微笑んだ。 「本当にそうねえ。葉さんが私たちの娘になってくれてから、私たちのは毎がのように温かいわ」
「お母様、私の方こそです。おに会えたから、今の私があるんです」
テラスのドアがき、エプロン姿の藤が、焼きたてのアップルパイと茶のポットを載せたトレイを運んできた。 「お父さん、お母さん、お茶が入りましたよ。葉さんの好きなアールグレイです」
「まあ、正さん、いつもすまないねえ」 「いいえ、お母さん。僕がべたいだけですから」
でテーブルを囲み、湯気のつ茶を啜る。 誰の顔を窺うこともなく、理尽な暴言に怯えることもなく、互いをいやる温かな笑顔だけが満ち溢れる。
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ふと、私の脳裏を、のあの夜の景がかすめた。
玄関に積みげられたゴミ袋の。 『百円の役たずが、収千万円の俺に寄するな!』と勝ち誇っていた男。
あの、男が私を切り捨てたつもりでいた愚かな選択は、結果として、私を縛り付けていたすべての呪縛を砕し、私に本物の自由と、本物の族と、かけがえのない最の伴侶を引き寄せるための、最の契となったのだ。
自らのでち、誠実に汗を流してきる者には、必ずの当たるが訪れる。 の信用に寄し、傲に胡座をかいて者を踏みにじる者には、自らの蒔いた種によって自滅する暗黒の末が待っている。
世界は、驚くほど正確に、因果の帳尻をわせていくのだ。
「葉、どうしたんだい? 茶がめてしまうよ」 藤が優しく私の顔を覗き込んだ。
私は考の彼方から戻り、目のの温かなに向かって、満面の笑みを向けた。
「ううん、何でもないの。……ただ、今が番幸せだなあって、そうっていただけよ」
バルコニーのには、どこまでも青く広がる相模湾のと、黄に輝くの陽が、私たちのこれからの未来を祝福するように、どこまでも、どこまでも果てしなく広がっていた。